ソ連(正式名「ソビエト社会主義共和国連邦」)という国家をご存知だろうか?
40代以降の方は大部分が知っているだろうが、中学生や高校生では知らない方もいるだろう。
出典:外務省
ソ連は、1922年から1991年までの間、ユーラシア大陸に存在した連邦国家だ。
現在は分裂して、ロシア連邦やウクライナ、カザフスタン共和国などになっている。
ただし、その国民や領土の多くは、現在のロシア連邦となった。
ソ連は、マルクス・レーニン主義を掲げた「ソビエト連邦共産党」による一党制の社会主義国家だ。
マルクス・レーニン主義とは、資本論を記したマルクスの理論をレーニンが実施したものだ。
簡単に言うと、社会主義のすばらしさを主張している。
これを利用したのが「ソビエト連邦共産党」だ。
第二次世界大戦後の世界は、米国陣営とソ連陣営に分かれていた。
ソ連は1991年時点で、人口は3億人弱、世界一広大な領土、世界一の核兵器数をもっていた。
更に、GDPも米国の半分程度(崩壊後に嘘と判明)と言われていた。
その超大国がなぜ崩壊してしまったのだろうか?
ソ連が崩壊した最大の理由は、経済破綻だ。
国民が食料や日用品を手にいれることができなくなってしまったのだ。
年配の方のなかには、ソ連の国民が買い物をするために、店の前で長蛇をつくっているテレビ映像を覚えている人もいるだろう。
米国はレーガン政権(1981年~1989年)の時代、インフレ退治という名目で「政策金利」を上げた。そのため、世界中から金が集まってきた。
米国政府は集まってきた資金で米国債を大量に発行し、財政政策をガンガンやった。
米国政府はこの金を主に軍事費として使った。
原子力空母やミサイルなどを作った。
更に、戦略防衛構想(通称「スターウォーズ計画」)まで。これは衛星軌道上にミサイル衛星やレーザー衛星を配備し、敵国の大陸間弾道弾を各飛翔段階で迎撃するというものだ。当時はまだ「イージスシステム」は実用化されていなかった。
相手が持っている武器は、自分も持たないと抑止力が働かなくなる。
当然、ソ連も軍事費に予算をつぎ込む。その結果、国民のために使われる予算が削られていき、ソ連国民は貧しくなっていった。
ソ連の主力産業は鉱業だった。具体的には、石炭や石油、貴金属などだ。これらの輸出でソ連は外貨を獲得していた。
当時のソ連の産業は、一部を除き国営だった。そして、鉱業以外の産業は失敗していた。もちろん、農業や工業も。
そして、ソ連にとって最悪の事態が起こる。
1985年11月末、石油価格は1バレル30ドルを上回っていた。
しかし、翌年に入り大暴落が始まり、1986年3月末には10.42ドルまで下落してしまう。
外貨が得られなくなると、外国から物を輸入することができなる。
店からは食料品や日用品が消えていき、物価はどんどん上がっていった。
物価の上昇と輸出額の減少により、ソ連の通貨「ルーブル」の価値は下がっていった。
通貨の暴落は国家の衰退を意味する。
過去の歴史をみると、国家が崩壊する時は通貨の暴落も同時に発生している。
しかし、経済構造に致命的な欠陥があった。
現在、日本や米国など多くの国は資本主義だ。
資本主義の方が現実的な社会システムだ。
自動車産業を例にとると、日本で現在自動車を製造している企業は限られている。
トヨタや本田などだ。
しかし、今まで外国の企業も含めると、100以上の自動車製造業者が存在していた。
現在の自動車メーカーは、企業間の競争に勝つ抜き、生き残った企業だ。
自由競争の原理により、消費者にとって良くない企業は消えていったのだ。
ソ連などの社会主義国では、この「自由競争の原理」が働かない。
すべて国営企業で潰れることがないからだ。
このため、ソ連では有望な産業をつくることはできなかった。
社会主義は、平等で公正な社会を目指すという考え方だ。
富は労働に応じて受け取り、私有財産は一部認められている。
富を分配する人間が必要なため、大きな政府が必要なる。
富を国家に集約する過程や分配する過程で争いが発生しやすく、大量虐殺が発生する場合が多い。
富は必要に応じて受け取り、私有財産は認められていない。
最終的には、富を分配する人間は不要となるため、政府も不要となる。
つまり、すべても物は共有財産で、それらを誰でも自由に使うことができるというものだ。
本物の「地上の楽園」をつくるという訳だ。
もちろん、共産主義国家が存在したことはない。
共産主義を実現させるための過程
社会主義の性格が強い国家なら存在することが可能だ。
しかし、ソ連が崩壊した時点で、共産主義は実現不可能ということが証明されてしまった。
そもそも、本来の共産主義という思想が夢物語だ。
現在、共産党が権力を握っている国は、支那・ベトナム・ラオス・キューバの4カ国だ。
「これらの国の実態は社会主義国家か?」と問われれば疑問だ。
少なくとも、経済に関しては、資本主義に傾いている。
日本国内では、日本共産党や革マル派、中核派などの党派が存在するが、それぞれに異なる共産主義を掲げている。
日本共産党に関しては、第23回党大会(2004年)で綱領を改定し、その定義を変えている。現在は「社会主義」と「共産主義」を同じ意味で使っている。
共産主義は理想的な思想ではあるが、実現は不可能だ。
社会を共産主義に近づけようとすると、思想とは反対にどんどん破壊されていく。
いくら屁理屈を並べても、この事実は変わらない。
この事実を受け入れたくないのだ。
共産主義の亡霊たちは。