令和2年2月1日、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国(英国)は、欧州連合(EU)から離脱した。
英国のEU離脱は、通称「ブレグジット」と言われる。これは"British" と "exit" の混成語。
離脱は国民投票により決定した。残留支持1614万票(約48%)、離脱支持1741万票(約52%)の僅差だった。
欧州連合とは、平成5(1993)年のマースリヒト条約(欧州連合条約)により設立されたヨーロッパの国家統合体である。
英語では"European Union"で、略称「EU」。
第二次世界大戦以降、欧州では国家統合の動きか起こった。欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)や欧州原子力共同体(EURATOM)のような国家の枠を超えた組織ができ、これらを統合したのがEUである。
昭和27(1952)年、欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)が設立した時の加盟国は①ドイツ、②フランス、③イタリア、④ベルギー、⑤ オランダ、⑥ルクセンブルク。この6カ国は「EUの原加盟国」といわれる。
平成5(1993)年、EUが設立された時点の加盟国は12カ国。その後、EUは拡大と続け、平成25(2013)年にはクロアチアも加わり、加盟国は28カ国にまで増えた。
今回、英国は初のEU離脱国となった。
ウェストミンスター宮殿前で、「英国はEUに残るべきだ」というデモする市民、出典:Flickr
英国がEUから離脱したのは、一言でいえば「国家主権」を取り戻すためである。
英国民は事実上、2つの政府の元にあるような状態だった。1つは英国政府、もう1つは「事実上のEU政府」である。EUは政府ではないが、その実態は政府に近いものである。
EUは加盟国を縛る法律をつくることができる。
EUは英国の漁民に対し、英国領海内で取る魚の上限を決めてしまった。これにより、数万人の雇用が失われたといわれている。
更に、EUが提示した数の『移民』も受け入れなければならない。
EUのメリットは、特に企業にとっては大きい。加盟国内でモノを移動させることができる。
EUのメリットを最も享受している国はドイツである。EU内において関税なしでモノが売れると同時に、EU外へモノを売っても通貨高になりにくい。統一通貨"ユーロ"を使っているからだ。以前の通貨"ドイツマルク"ではこうはいかない。
また、EU加盟国が結束することにより、ロシアに対する牽制にもなる。
ここからは筆者個人の見解である。
大袈裟と言われそうだが、EUの拡大は『侵略の一種』だと思う。
加盟国は国家主権がEUに取られていく。その代償として新たな権利を得て、特定の人や組織のみがその恩恵に預かる。
国家主権は一度放棄したら、取り戻すのは難しい。
英国のEU離脱は、同国が「国家主権」を取り戻す戦いともいえる。