国際度量衡総会(こくさいどりょうこうそうかい)が16日、フランス・ベルサイユで行われ、キログラム(kg)など4つの基本単位の定義改定案が承認された。
同改定案は、2019年5月20日より施行される。
現在、国際的に定めた単位のルール「国際単位系(SI)」は、7つの基本単位を定めている。
7つの基本単位のうち、定義が変わる単位
・キログラム(kg):質量
・アンペア(A):電流
・ケルビン(K):温度
・モル(mol):物質量
定義が変わらない単位
・メートル(m):長さ
・秒(s):時間
・カンデラ(cd):光の速さ
キログラム(kg)の定義は、130年ぶりの変更となった。
新定義が適応されることにより、7つの基本単位全てが「原器」から「不変の定数」へと変わる。
今回の改定は歴史的なものとなった。
なお、キログラム(kg)の定義の改定には、日本の産業技術総合研究所(茨城県つくば市)の研究成果も大きな役割を果たした。
シテ科学産業博物館の「キログラム原器」のレプリカ、出典:Wikipedia
1kgの定義は、国際キログラム原器の質量に等しいとされている。
国際キログラム原器とは、直径・高さともに約39mmの円柱形の、白金(プラチナ)90%、イリジウム10%からなる合金製の金属塊である。フランス・パリ近郊セーヴルのBIPM(国際度量衡局)に、2重の気密容器の中に、真空中の状態で保管されている。
国際キログラム原器の質量は、表面吸着などの影響により年に1 μg(マイクログラム)=0.000001g 程度増加しているとみられていた。
また、国際キログラム原器の洗浄が行われた時には約50µg減少した。
このような理由から、キログラム(kg)の単位も他の基本単位と同様、不変のものすべきという主張が以前からあった。しかし、今まで技術的な理由により変更することができずにいた。
SI基本単位、出典:Wikipedia
7つの基本単位のうち、その定義が変わるのは4つである。
キログラム(kg)、アンペア(A)、ケルビン(K)、モル(mol)の定義は物理定数によるものとなった。
キログラム(kg):質量
現在の定義:国際キログラム原器の質量
新しい定義:プランク定数(h)、 h = 6.62607015×10−34 J s
アンペア(A):電流
現在の定義:真空中に1メートルの間隔で平行に置かれた無限に小さい円形の断面を有する無限に長い2本の直線状導体のそれぞれを流れ、これらの導体の1メートルにつき、千万分の2ニュートンの力を及ぼし合う直流の電流
新しい定義:電荷素量(e)、e = 1.602176634×10−19 C
ケルビン(K):温度
現在の定義:水の三重点の熱力学温度の273.16分の1
新しい定義:ボルツマン定数(k)、 k = 1.380649×10−23 J K−1
モル(mol):物質量
現在の定義:0.012キログラムの炭素12の中に存在する原子の数と等しい構成要素を含む系の物質量
新しい定義:アボガドロ定数(NA)、NA=6.02214076×1023 mol−1
これらの定義改定が行われても、日常生活に直ちに影響を与えることはない。
しかし、長期的な不変性が確保されることにより、微小質量を直接測ることなど、今までに不可能だったことが可能となっていく。
確実に言えるのは、人類の科学技術はまだまだ進歩するということである。