東北大学大学院医学系研究科の
情報元:世界初のアルツハイマー型認知症に対する超音波治療の医師主導治験
治験とは、医薬品や医療機器の製造販売の承認を得るために行われる臨床試験のことである。語源は「治療の臨床試験」の略であると言われている。
同治験は、安全性評価に主軸が置かれ、平成30年6月より5名の患者に対して行われていた。今回、今月11 日に開催された効果安全評価委員会で安全性が確認されたため、次のステップに移行することとなった。
平成31 年 4 月から有効性評価に主軸が置かれ、患者40名に対して本格的な治験が開始される。
通常の老人の脳(左)とアルツハイマー型認知症患者の脳(右)、出典:Wikipedia
アルツハイマー型認知症とは、アルツハイマー病によって引き起こされる認知症のことである。脳が萎縮していき、認知機能低下、人格の変化などの症状が発生する。認知症の6割強はアルツハイマー型認知症であると言われている。
現在、アルツハイマー病の根本的な治療法はない。脳の生き残った細胞を活性化させ、覚えたり考えたりする働きをある程度保つ薬はあるが、進行を完全に止めることはできない。
同研究グループは、低出力パルス波超音波(low-intensity pulsed ultrasound:LIPUS)をアルツハイマー病のマウスの全脳に照射したところ、アルツハイマー病の特徴の一つであるアミロイドβの蓄積が著名に減少することを発見した。これにより、認知機能低下を抑制できる可能性が確認された。
LIPUSは、周波数20kHz以上のため人間の耳には聞こえない。また、パルス波という断続的に音波を発信する照射方法であるため、高い強度での照射が可能となる。
LIPUS治療はすでに骨折の治療に用いられている。治癒までの期間を4割ほど短縮させる効果があり、安全性も高い。
研究グループは企業と連携して、経頭蓋超音波治療装置を開発。患者はヘッドホンのようなものを被り、そこからLIPUSが射出される。
治療は3カ月ごとで、期間は18カ月。
今後は同装置による検証的治験の実施、薬事承認申請を目指す。
高齢化の進展により、アルツハイマー型認知症の患者は今後増えていくことが予想されている。
現時点で過大な期待は禁物だが、LIPUS治療がアルツハイマー病の根本的な治療法に繋がることを期待する。