大阪大学の研究グループは、パーキンソン病患者の
α-シヌクレインとは、タンパク質の一種である。主に神経組織内に存在するが、その機能は不明である。α-シヌクレインの蓄積は、パーキンソン病をはじめとする神経変性疾患の原因とされている。
凝集体とは、微粒子がより大きな集合体となり生成された塊をいう。
パーキンソン病は、手の震えや動作の困難などの運動障害が発生する、進行性の神経変性疾患である。症状を和らげる薬はあるが、進行を食い止める治療法は現時点ではない。有効な予防法もない。
パーキンソン病は重度になるほど、脳内にα-シヌクレイン凝集体が多く蓄積していることが、死亡後の病理解剖からわかっている。しかし、生前にその程度を検査する方法は今までなかった。
正常なヒトの
同研究グループは、超音波を用いた全自動タンパク質凝集検出装置「HANABI」を用いて、パーキンソン病患者の脳脊髄液中のα-シヌクレイン凝集体の検出に成功した。
HANABIは、超音波照射装置と凝集体測定器を組み合わせた機械で、リアルタイムで凝集体が増幅されていく過程を観察することができる。凝集体が増幅される速さ(凝集活性)から、脳脊髄液中に存在する凝集体の量を推定する。同時に複数の脳脊髄液を測定することも可能。
更に、パーキンソン病患者の脳脊髄液中のα-シヌクレイン凝集体の程度は、実臨床で用いられているパーキンソン病の指標(MIBG心筋シンチグラフィの取り込み低下)と相関することも突き止めた。
同手法を用いて検出された脳脊髄液中のα-シヌクレイン凝集体の程度が、脳内の凝集体蓄積量を推定する指標となり得ることが示されたといえる。今まで、脳内のα-シヌクレイン凝集体の蓄積量を推定することは不可能だった。
日本でのパーキンソン病の発症者は、60歳以上では約1%と言われている。意外にも身近な病気なのだが、不明なことが多い。
同研究成果が、パーキンソン病の臨床診断や重症度評価、更には治療開発に繋がることを期待する。