英国のメイ首相は24日、6月7日に与党・保守党(正式名は「保守統一党」)の党首を辞任すると表明した。首相職も7月下旬ころ退く。
メイ氏は新首相が決まるまでは職務を続ける。6月3日には国賓として英国を訪れるトランプ米大統領を迎え、6月28~29日に大阪で開かれるG20(主要20か国・地域首脳会議)にも出席する予定。
辞任を表明した英国のテリーザ・メイ首相、出典:Wikipedia
メイ首相が辞任した理由は、EU(欧州連合)からの離脱に関する一連の混乱の責任をとってだ。
同氏は今年、EUとの離脱協議案を、3度にわたり下院に提出したが否決されていた。現在、メイ氏の所属する保守党は貴族院(上院)・庶民院(下院)ともに第一党だが、両院とも過半数の議席をもっていない。
今月21日には、条件付きながら2度目の国民投票を容認する妥協案を示し、野党の取り込みを図ったが失敗。メイ政権と庶民院との調整役である、レッドソム庶民院院内総務がこれに反対して辞任。混乱が広がっていた。
英国はEUに加盟したことにより移民数が激増。国民に不満が溜まっていた。
平成23年、EU離脱の署名10万筆以上が英政府に提出される。
平成28年6月23日、EU離脱を問う国民投票が実施され、英国はEU離脱を決定。残留支持派だった当時のキャメロン首相は辞任する。
EU離脱は大仕事であるため、誰も首相をやりたがらなかった。この時に手を挙げたのがテリーザ・メイ氏である。
同氏は英国のEU離脱には反対の立場だったが、決定した以上は最善をつくすべきだとし、できる限りのことをする。
しかし、平成29年6月の総選挙で大きなミスを犯す。当時、保守党の庶民院(下院)で単独過半数の議席を有していたが、13議席減らし、単独過半数割れとなってしまう。なお、直前の世論調査では保守党が圧倒的に有利だった。
この選挙がメイ氏と英国の運命を大きく変えた。
次期英国首相の最有力候補ボリス・ジョンソン氏、出典:Wikipedia
英国・保守党(正式名は「保守統一党」)の党首選は6月10日の週に始まり、新党首を選出するまで1か月以上かかる。
現時点の最有力候補はボリス・ジョンソン氏、次点はドミニク・ラーブ氏である。英調査会社ユーガブが5月中旬に保守党員を対象に行った調査では、39%がジョンソン氏、13%がラーブ氏を支持している。
ジョンソン氏は、英国が国民投票でEU離脱を決めた時のリーダーと言える存在だった。キャメロン首相の辞任後に首相就任を熱望されていたが、これを断っている。
EU離脱を主張している理由の一つは、中華人民共和国とFTAを結ぶためである。本人も何度も発言している。
同氏は、昭和39年(1964年)に米国・ニューヨークで生まれるが、長らく二重国籍であった。平成29年(2017年)2月、米国財務省が「2016年にアメリカ国籍を離脱した人物のリスト」を公表したため明らかとなった。
同氏は、同年幼馴染と再婚し、4人の子供をもうけた。これが現在の配偶者である。しかし、英国の新聞『スペクテイター』の記者を2度妊娠(1度は流産、1度は中絶)させており、これを理由に党の役職を解かれている。更に、芸術コンサルタントとの間に女児をもうけている。
ここからは筆者の主観なので、過度に信用しないで頂きたい。
英国の新首相にはジョンソン氏、若しくは、ラーブ氏がつくだろう。両者はメイ政権で閣僚をやっていたが辞任し、メイ首相を批判している。そのような人間を信用できるだろうか?
EUにも多いに問題がある。英国に過度な要求を突き付けたため、理解者とも言えるメイ氏を失ってしまった。
ジョンソン氏もラーブ氏も、EU離脱派で今は威勢のいい事を言っているが、現実はそう甘くはない。彼らの聴衆受けを狙った発言を聞いていたら、かつて日本で政権をとる前に民主党が言っていたことを思い出した。
メイ氏は愛国者だ。Best(最高)とは言えないが、Better(良い)な政治家ではある。
今後、英国とEUが混乱する可能性は高いと思う。