坂本弁護士一家殺害事件から今日で30年が経った。
坂本弁護士一家殺害事件とは、平成元年(1989年)11月4日、オウム真理教(現:Aleph)の幹部ら6人が、坂本堤(つつみ)弁護士と家族3人を殺害した事件である。
実行犯は村井秀夫、早川紀代秀、岡崎一明、新実智光、中川智正、端本悟。教祖・麻原彰晃(あさはら・しょうこう)こと松本智津夫(まつもと・ちづお)の指示による犯行だった。
殺害された坂本堤弁護士はオウム真理教問題に取り組んでおり当時33歳、妻都子(さとこ)さんは29歳、長男龍彦ちゃんは1歳だった。
坂本堤弁護士と妻都子さん、長男龍彦ちゃん、出典:Twitter
平成元年(1989年)5月、坂本堤弁護士らは「オウム真理教被害者の会」を組織し、オウム真理教の反社会性を追及し始める。
同年9月、『サンデー毎日』で「オウム真理教の狂気」特集がスタートする。オウム真理教への批判は強まっていき、坂本弁護士も取材を受けるようになる。
10月26日、いわゆる「TBSビデオ問題」が発生する。東京放送(現:TBSテレビ)のワイドショー番組『3時にあいましょう』のスタッフが、坂本弁護士がオウム真理教を批判するインタビュー映像を放送前にオウム真理教幹部に見せてしまう。そして、上祐史浩、青山吉伸、早川紀代秀の抗議により放送は中止となる。
10月31日、上祐、青山、早川は横浜にある坂本弁護士の事務所で、坂本弁護士が予定していたオウム真理教に対する訴訟回避のため、交渉を行った。しかし、坂本弁護士は妥協せず、オウム真理教の宗教法人の認可取り消しなどの民事訴訟の準備に入った。
11月2日または3日頃、教祖・麻原は村井秀夫、早川紀代秀、岡﨑一明、新実智光、中川智正に坂本堤弁護士を殺害するよう指示を出す。
オウム真理教の教祖・麻原彰晃こと松本智津夫、出典:Twitter
11月4日午前3時頃、オウム真理教の幹部ら6人は、坂本堤弁護士宅に侵入し犯行に及んだ。
坂本弁護士は端本に馬乗りされ、顎を6~7回殴られた後、岡﨑に首、早川に足を押さえられた。中川が尻に塩化カリウムを打ったが、筋肉注射だったため効果が無く、2~3回ほどやり直したが針が曲がった。その後窒息。
妻都子さんは新実に馬乗りされ、上半身を蹴られるなどの暴行を受けた後、村井、早川、中川に首を絞められる。「子どもだけは」と命乞いをしたり、村井の指を噛んだりと抵抗したが、窒息死。
1歳の長男龍彦ちゃんは泣き出した。中川と新実に鼻口を押さえつけられ、窒息死。検察側は顔と腹を殴られたと主張したが、弁護側は否定した。
犯行の際、中川がオウム真理教のバッジ「プルシャ」を部屋に落としていた。このため、当初からオウム真理教は疑われていた。
しかし、事件は解決されないまま、時間だけが過ぎていった。
平成7年(1995年)春、実行犯の一人である岡﨑一明の自供により、事件は明らかになった。
同年9月6日、警察による山中の捜索が行われ、坂本弁護士と妻の遺体が発見された。4日後の10日には長男の遺体も発見された。3人の遺体は新潟、富山、長野と別々の場所に埋められていた。
刺殺された村井を除き、実行犯全員と指示を出した麻原に死刑判決が出た。
死刑は平成30年(2018年)7月6日と同月26日の2回に分けて執行された。
オウム真理教(現:Aleph)は様々な犯罪を犯した。
確認されているだけでも、一連の事件で29人が死亡(殺人26名、逮捕監禁致死1名、殺人未遂2名)し、負傷者は6000人を超えた。
オウム真理教が起こした事件を忘れてはいけない。
そして、オウム真理教の後継団体「Aleph(アレフ)」が今も存在していることも。