近畿大学水産研究所(本部:和歌山県白浜町)は1日、ニホンウナギの人工孵化(ふか)に成功し、稚魚の飼育期間が50日を超えたと発表した。
今後は、シラスウナギ(稚魚)まで育てることを第一目標として、その後、完全養殖をめざす。
ウナギとは、ウナギ科ウナギ属に属する魚類の総称である。
細長い体が特徴で、生息地は世界中の熱帯から温帯に分布している。生態には謎が多い。
ニホンウナギやオオウナギ、ヨーロッパウナギなど世界で19種類が確認されており、うち食用となるのは4種類。日本で食べられているのは、ニホンウナギが大半。
ニホンウナギは海洋で産卵を行い、孵化した稚魚は汽水域から淡水の河川で成長する。
仔魚は「レプトケファルス」と呼ばれ、透明で、成魚とは異なり柳の葉のような形をしている。
レプトケファルスは150~500日後、成長して稚魚になる。この段階で変態を行い、扁平な体から円筒形の体へと形を変え「シラスウナギ」となる。ほぼ透明で、体調は5センチほど。
国内におけるウナギ養殖のほぼ全ては、このシラスウナギを捕獲し、成魚まで育て出荷している。
日本で採捕されるシラスウナギは減少している。平成26年(2014年)、国際自然保護連合(IUCN)はニホンウナギを絶滅危惧種(EN)に指定した。
ニホンウナギの完全養殖は、国立研究開発法人「水産研究・教育機構」が平成22年(2010年)に成功している。しかし、高コストのため、商品化には至っていない。
近畿大学水産研究所は水産研究・教育機構から研究者を招き、今年3月から養殖研究を本格的に始めた。
9月に二ホンウナギの成魚から数10万個の卵を採取し、人工授精に成功した。
孵化(ふか)した稚魚のうち、20尾ほどが50日間生き残り、約2センチまで育った。餌のやり方など独自の養殖法があるのだという。
完全養殖技術が確立するまで、早くても3~4年はかかる見通し。
ウナギの蒲焼、出典:Wikipedia
ニホンウナギ稚魚(シラスウナギ)は、漁獲量が大幅に不足している。
現在は輸入で補っているが、密漁が横行している。暴力団の資金源にもなっている。
平成30年(2018年)には、国内で採捕された稚魚の約40%が密漁や漁獲の無報告の疑いがあると報道された。
近畿大学水産研究所は今まで、多くの実績を残してきた。
初めて人工孵化から養殖の元になる種苗生産に成功した魚種は、ブリやマイワシなど18種類にものぼる。平成14年(2002年)に完全養殖に成功したマグロ、通称「近大マグロ」は有名だ。
二ホンウナギの完全養殖、ぜひ実現させてほしいものである。