近畿大学水産研究所新宮実験場(和歌山県新宮市)は、チョウザメ類の全メス化に、日本で初めて成功したと発表した。
ドイツから受精卵を輸入し人工ふ化させたシベリアチョウザメに、女性ホルモンを含む配合飼料を与え続けて、全ての個体をメス化させた。
チョウザメ類とは、チョウザメ目チョウザメ科の種をいう。古代魚に分類され、サメとは全く別の魚である。
体はやや円筒形で、口が下面にある。2対の口ひげがあり、それで砂泥中を探りながら餌をとる。体の背面は灰青色で、腹面は白色。
現在知られているチョウザメ類は2科6属28種。体長は成魚で1~2mのものが多いが、オオチョウザメは8mを超えたという記録もある。オオチョウザメ、コチョウザメ、シロチョウザメ、ベステル、シベリアチョウザメが有名である。
シベリアチョウザメは生後5~7年で成魚となり、体長は170cm、体重は65kgほどになる。稀に200kgを超える個体もある。淡水魚。
シベリアチョウザメは最もキャビア生産に使用されている種である。
シベリアチョウザメを下から見たところ、出典:Wikipedia
今回の研究では、ふ化後4カ月目のシベリアチョウザメの稚魚150尾に、女性ホルモンを混ぜた配合飼料を6カ月間与えた後、22カ月目まで通常の配合飼料で飼育した。
この中から無作為に45尾を抽出し調べたところ、全ての個体で卵細胞が確認され、メスだった。
雌雄を判別するためには、通常、3歳程度になったチョウザメを1尾ずつ池から取り上げ、腹部を切開し、生殖腺の色や形を目視確認する。
その後、外科用の針と糸で切開部を縫合して池に戻す別作業も必要となる。
全メス化することにより、雌雄を判別する工程を省略でき、オスを育てる必要もなくなる。生産者の労力は軽減される。
情報元:シベリアチョウザメの全メス化に成功 雌雄判別作業を削減し、キャビアの効率生産を目指す|学校法人近畿大学のニュースリリース
今回のような研究は、養殖という観点からは必要なものである。
ただ...
「人間とは自分勝手な生き物だなぁ...」という気持ちが筆者の心には少し残った。