東京大学とフィリピン大学ロスバニョス校の研究グループは、フィリピン固有種「ハリナシミツバチ」のプロポリスに、胃がん抑制効果があることを明らかにした。
分化型胃がんの腫瘍細胞に対して強力な増殖抑制作用を持ち、マウスによる実験でも抗腫瘍効果(腫瘍細胞の増殖を抑えたり、死滅させる働き)を確認できた。
プロポリスとは、ミツバチが木の芽や樹液などの植物源から集めた樹脂製混合物のことである。「蜂ヤニ」と呼ばれることもある。
プロポリスの性質は、ハチの種類や産地などにより異なる。
フィリピン固有種のハリナシミツバチ(左)、プロポリス採取の様子(右)、提供:東京大学
研究グループはまず、ハリナシミツバチのプロポリスが4種類のヒト胃がん患者由来細胞株(AGS, MKN-45, NUGC-4, MKN-74)に対して、どのように作用するのかを調べた。
その結果、分化型胃がんの性質がある3種類(AGS, MKN-45, NUGC-4)に強い増殖抑制が見られ、1種類(MKN-74)には見られなかった。
胃がんはがん細胞の増殖の仕方により、「分化型胃がん」と「未分化型胃がん」に分かれる。
分化型胃がんは、がん細胞が腺管構造をつくりながらまとまって増殖するタイプ。胃がんの部位を特定しやすい。
一方、未分化型胃がんは、がん細胞がパラパラと広がるように増殖するタイプ。胃がんの部位の特定が困難で、増殖のスピートも早く、悪性度が高い。
研究グループは次に、分化型胃がんのマウスに、ハリナシミツバチのプロポリスを30日間毎日、体重あたり100mg/kg 経口投与した。
その結果、同マウスの胃がんは小さくなり、胃の粘膜上皮の厚さも減少。抗腫瘍効果を確認できた。
なお、同プロポリスを"ガスクロマトグラフィー質量分析法"で成分分析したところ、これまで報告されている他のプロポリスとは異なる化合物が含まれていることもわかった。
研究グループは今後、ハリナシミツバチのプロポリスに含まれる特有の化合物の分析を行う予定。
また、分化型胃がんの腫瘍細胞以外の腫瘍に対しても、抗腫瘍効果があるのか調べたいとしている。
生物のなかには、ヒトの創造を超える能力を持っている種も多い。ハチもその一つである。
これらの生物を研究することにより、新しいことが発見される場合もある。
地球上の生物でヒト(ホモ・サピエンス・サピエンス)が一番優れている...と勘違いしてはいけない。