大阪大学などの研究グループは、レーザーを用いて、2200万度・200億気圧に相当する電離気体(プラズマ)の生成に成功した。
「高速点火方式」という独自の方式による。
世界最大級のパワー(瞬間的出力が世界中で消費される電気パワーの約1000倍)を誇るLFEXレーザーを用いて、世界一の効率で、太陽中心の1/10以上の超高圧力状態(200億気圧)プラズマを生成した。
大阪大学のLFEXレーザーは、比較的長時間の加熱が可能(それでも僅か1兆分の1秒)。
気体とプラズマのイメージ、作成:素人が新聞記事書いてみた
プラズマとは、固体、液体、気体に続く第4の物質状態(相)である。原子の一部又は全部が、原子核(イオン)と電子に分離した状態となる。日本語では「電離気体」という。
プラズマは、地球上にはほとんど存在せず、雷やオーロラなど特定の現象に限られている。
しかし、宇宙では物質の99%以上はプラズマの状態にある。そして、プラズマ状態でのみ「核融合反応」を起こすことができる。
核融合反応とは、原子核同士が合体する反応である。膨大なエネルギーが発生するのが特徴。太陽などの恒星は、核融合反応をしている。
プラズマを研究するのは、核融合反応を発生させ、そのエネルギーを利用するためである。特に、発電での利用が期待されている。
ちなみに、原子核が分裂する反応が「核分裂反応」である。原子力発電や原子爆弾などが該当する。
高速点火方式によるプラズマ加熱の過程、提供:大阪大学
研究グループは、レーザーを使った「高速点火方式」という独自の方式で、プラズマを生成した。
まず①複数のナノ秒(10億分の1秒)レーザーを用いて核融合燃料を高密度に圧縮し、②ピコ秒(1兆分の1秒)の高強度レーザーで瞬間的に加熱することで、③核融合を点火し、燃料の大部分を燃焼させ、プラズマを生成した。
核融合燃料の温度は、2200万度まで上昇した。プラズマ状態になると超高圧力が発生する。生成したプラズマは、200億気圧相当にまで達した。
ここまで高温が出せたのは、圧縮された燃料の一部が加熱レーザーにより直接加熱され、熱波が高速(秒速数千キロメートル)でプラズマ中に広がったためである。
人類は何十年も核融合の研究をしているが、今だに人工的に発生させることはできない。
...が、今回の成果により、実現に大きく前進した。もちろん、まだまだ道は遠いが。