ある事件や出来事について、事実や一般に認められている説ではなく、別の策謀や謀略によるものであるとする考え方である。
程度の差こそあれ、誰でも陰謀論を信じているものである。
そういう筆者も、米国がイラクを攻撃した時、イラクが大量破壊兵器を保有していると信じていた。
陰謀論は昔から存在していた。
最も有名なのは「ユダヤ陰謀論」である。歴史上の出来事が、ユダヤ人の陰謀や策謀により起きたとするものだ。
この類の陰謀論は多く、ユダヤ人ではなく、ロスチャイルド家などのものもある。
「魔女」も陰謀論である。悪魔と契約を結んだ女性が魔術によって禍をもたらすと、昔は多くの人が信じていた。
欧米では16～18世紀にかけ、魔女裁判により推定4～6万人が処刑された。
魔女と認定された人の火刑、1555年にニュルンベルクで印刷されたチラシ
現代では流石に、魔女を信じる人はごく少数となった。
しかし、陰謀論の数は現在の方が増えている。インターネットの普及により、個人でも情報発信が容易となったのが主因だ。
最近多い陰謀論は、SARSコロナウイルス2（新型コロナウイルス）に関するものである。
多くのものがあるが、世界的に有名になったのは以下の2つ。
一つは人民解放軍生物兵器説。新型コロナウイルスは支那・武漢市付近から世界中に拡散されたため、武漢ウイルス研究所から漏れ出たという主張だ。支那が嫌いな人間が信じやすい。
もう一つは米軍伝染説。支那の趙立堅報道官が「発生源は米軍の研究施設と推測」という記事も紹介したため、反米主義者を中心に広がった。
その他にも、新型コロナウイルスの世界的流行（パンデミック）は幻想だとか、コロナワクチンにマイクロチップが入っているとか...
陰謀論には、政治思想（イデオロギー）と関連しているものも多い。
日本を例にとると、左翼には「安倍政権陰謀論」を信じる者が多かった。安倍政権が不祥事などで窮地に立たされると、芸能人が逮捕されたり、北朝鮮がミサイルを撃ったり、地震が起きたりして、国民の目をそらせるというものだ。
一方、右翼には「2020年米大統領選挙はトランプが勝った」と信じる者が多かった。彼らは不正選挙だと主張していた。
左翼と右翼は似ているのだ。
陰謀論には事実だったものもある。北朝鮮による日本人拉致や、オウム真理教による松本サリン事件などである。
それでも、陰謀論を妄信すべできはないと筆者は思う。根拠（証拠）がないものは「もしかしたら、本当かもしれない」くらいに留めるのが妥当と考える。
陰謀論を妄信するのは、宗教を妄信するのと似ている。そういう人間を説得するのは困難である。
歴史を見ると、陰謀論を妄信する人間が増えると、国家や地域社会に悪影響を及ぼすこともあった。
国益のためにも、陰謀論を妄信する日本人を増やしてはいけない。
