弘化5年(1848年)2月21日にロンドンで発行された、全文わずか23ページの薄緑色のドイツ語小冊子。
世界初の国際的労働者組織「共産主義者同盟」の綱領であり、共産主義の目的と見解を初めて明らかにした文書である。
カール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスによって書かれた。
『共産党宣言』初版の表紙
当時、ヨーロッパでは産業革命が起きていた。機械化によって生産性が一気に向上した反面、貧富の差が拡大していた。
資本家は巨万の富を築くようになっていた。しかし、労働者は低賃金で過酷な労働に従事していたため、社会不安が広がっていた。
資本主義を批判的に捉える、共産主義や社会主義が支持を集めていた。
この流れを受け、世界初の国際的労働者組織「共産主義者同盟」は誕生した。非民主的な方法で社会の変革を目指したため「秘密結社」とされる組織。
共産主義者同盟のスローガン「万国の労働者よ、団結せよ」は有名である。これは共産党宣言の末文。
共産主義:産業の共有によって搾取も階級もない社会を目指す思想・運動・社会体制。
カール・マルクス(左)とフリードリヒ・エンゲルス(右)
『共産党宣言』の冒頭は、以下のように始まる。
ヨーロッパに幽霊が出る-共産主義という幽霊である。ふるいヨーロッパのすべての強国は、この幽霊を退治しようとして神聖な同盟を結んでいる、法皇とツァー、メッテルニヒとギゾー、フランス急進派とドイツ官憲。‥‥共産主義はすでに、すべてのヨーロッパ強国から一つの力と認められている‥‥
これも有名な一節である。この部分だけみれば怪しさ満載だが、共産党宣言の内容は経済がメインである。
共産党宣言で提案している主な政策は以下のとおり。
共産主義・社会主義的な政策だけでなく、現在の資本主義国でも採用している政策もある。
所得税の累進課税は、世界中の国で採用されている。銀行の国有化は金融危機になると先進国で実施する。農業と工業の融合に近いことは、安倍内閣で行っていた。
児童労働の工場労働廃絶や義務教育の無償化は、現在では当たり前である。
ただ...
共産党宣言には「共産主義者は、これまでのすべての社会秩序の暴力的転覆によってのみ、自分の目的が達せられることを、公然と宣言する」という一文がある。
筆者は、このような考えが全てを台無しにしていると思う。
「自分たちの正義のためなら、何をしても良い」いうのは間違っている。
共産党宣言が発行された当時にあった資本主義の問題点は、ほとんどが解消された。