国立がん研究センターを中心とする研究グループは、卵巣(らんそう)がんを血液から高精度(感度99%、特異度100%)で検出する診断モデルの作成に成功した。
研究成果は、17日の国際科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」で発表された。
情報元:Integrated extracellular microRNA profiling for ovarian cancer screening | Nature Communications
検査の精度を示す代表的な指標に「感度」と「特異度」がある。それぞれの算出方法は以下のとおりで、最高値は100%である。
・感度(%):疾患罹患者÷検査陽性者
・特異度(%):疾患非罹患者÷検査陰性者
正面から見た女性器、出典:Wikipedia
卵巣とは、動物のメスの生殖器のひとつで、卵子を作り出す器官を言う。
ヒトの場合、卵巣は2個あり、子宮上端の左右に位置している。長さ数cmの長楕円形の平な形をしていおり、重さは1個が数gである。
卵巣がんと新たに診断される人は、1年間に10万人あたり14.3人。40歳代から増加を始め、50歳代前半から60歳代前半でピークを迎え、その後は次第に減少する。
初期段階では、ほとんど自覚症状がない。
下腹部にしこりが触れる、おなかが張る、トイレが近い、食欲の低下などの症状があって受診することが多い。しかし、この時には、すでにがんが進行していることも少なくない。
情報元:卵巣がん 基礎知識:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
卵巣がんの有効な検出方法の確立は、長年大きな課題となっていた。
研究グループは、「マイクロRNA」に着目した。細胞から血液中などに分泌される小さな物質である。近年の研究で、マイクロRNAは、がん等の疾患に伴い患者の血液中で種類や量が変動することがわかっていた。
今回、このマイクロRNAの組み合わせを利用した統計的解析により、早期から判別を可能にした診断モデルを作成することに成功した。
今回の研究では、合計4,046例の血液中のマイクロRNAを網羅的に解析した。内訳は、卵巣がん428例、その他のがん859例、がんを有さない2,759例である。その結果、高精度の診断モデル(判別式)の作成に成功した。
診断モデルの精度を検証した結果、卵巣がん患者全体の98.8%を正しくがんであると判別することができたという。ステージ別にみると、ステージⅠの患者群では95.1%、ステージⅡ~Ⅳの患者群では100%の精度で陽性と診断できたという。
なお、がんでない人の場合、100%の精度で「がんではない」と判別することができたという。
今回作成された診断モデルは、極めて高い診断精度のものだ。
加えて、血液数滴からの情報のみで、卵巣がんの検出が可能だ。
将来的に、卵巣がん診療に大きく貢献するだろう。