茂木敏充 (もてぎ としみつ)経済再生担当相は31日、東京都内で記者会見し、「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」(通称「CPTPP」)が、日本時間12月30日午前0時に発効すると発表した。
茂木氏は会見で、「保護主義が強まる中、自由で公正な21世紀型のルールが確立するという強いメッセージの発信となる」と述べ、CPTPP発行の意義を強調した。
CPTPPとは、"Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership"の略である。日本語では「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」。
物品(農産物や工業製品)の関税の引き下げと、知的財産権や投資などのルールと統一する協定である。国境を超え、物品の移動やサービスの提供、投資などが行われるようになる。
新しものではなく、昔からあるブロック経済の一種である。
報道では「TPP11」と言われる場合が多い。
11か国の国内総生産(GDP)の合計は世界全体の約13%、人口約5億人を抱える巨大な自由貿易圏が年内に誕生する。
CPTPPは11か国が参加するが、6か国以上の国内手続きが終了してから60日後に発行する。6か国目となるオーストラリアが10月31日に手続きを完了したため、年内の発行が可能となった。
CPTPP参加11か国の国内手続きの進行状況
国内手続き完了・・メキシコ、日本、シンガポール、ニュージーランド、カナダ、オーストラリア
11月中に完了・・ベトナム
手続き進める・・・ブルネイ、チリ、ペルー、マレーシア
CPTPP参加国、出典:Wikipedia
政府の試算によれば、貿易と投資の拡大により、日本のGDP(国内総生産)は年7兆8000億押し上げられ、雇用が約46万人増加する見通しだ。ただし、関税が引き下げられるまでには10年以上かかる物品が多いため、急に経済効果がでるという訳ではない。
平成29年度(2017年度)の日本のGDPは実質533兆円(名目548兆円)である。
CPTPPによる恩恵は、国全体としては軽微なものとなるだろう。
家計で恩恵を受けるのは、輸入食品の値下げだ。だだ、長い期間をかけ下げられるので、実感はあまり感じないだろう。
牛肉は安くなる。現在の関税率は38.5%だが、16年目には9%まで下げられる。
プロセスチーズには300トンの輸入枠がある。品目によってはすぐに安くものもあるだろう。
企業にとっては、まず輸出拡大が見込まれる。
特に自動車だ。カナダ向けの輸出関税は現在6.1%だが、5年目には撤廃される。ベトナム向けは現在70%だが、10年目には撤廃される。
海外でのビジネスもやりやすくなる。
データを自由に移動できるようになるため、電子商取引の増加が見込まれる。
国によっては、査証(ビザ)の発給も早くなる。
CPTPPは良いことばかりではない。
農業と畜産業にはマイナスだ。
牧場や肉牛農家、養豚の経営は苦しくなるだろう。
日本の農業と畜産業は、外国と比べ、1件当たりの規模が小さ過ぎる。
日本の農家の1件あたりの平均経営面積は2.27haだ。米国は169.6ha、ドイツは55.8ha、英国は78.6ha、オーストラリアは2970.4haだ。
この根本的な問題を解決しないと勝負にならない。
CPTPPが日本全体に与える影響は軽微なものだ。
ほとんどの人は関係がない話と言っていい。
ただ、農業と畜産業はこれを機に、何十年も前からの宿題を片付けた方が良いのではないのだろうか?
簡単にできる宿題ではないのだから。