京都大学は9日、「iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病治療に関する医師主導治験」の第一症例目の移植手術を実施したことを発表した。
手術時間は、移植細胞を準備する時間を含め、約3時間だった。
患者の容態は、術後良好だと言う。
京都大学によると、iPS細胞を利用したパーキンソン病治療は、世界初とのこと。
記者会見した高橋淳教授は、「患者さんに敬意を表したい。これからは企業と協力してiPS細胞から作った神経細胞を量産化する態勢を作っていきたい」と話した。
脳内におけるドパミンの経路。左が正常で、右がパーキンソン病患者、出典:Wikipedia
パーキンソン病とは、手の震えや歩行の困難などの運動障害を引き起こす、進行性の神経変性疾患である。
神経細胞を中心に、ゆっくりと他の細胞も正常な活動ができなくなっていく。
パーキンソン病は、脳内の神経伝達物質「ドパミン」が不足することにより、脳からの指令がうまく伝わらなくなっていく病気である。
原因は、脳内にある「ドパミン神経細胞」が減少することである。
今回の治験では、ドパミン神経細胞になる直前のiPS細胞「iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞」を脳内に移植した。
「iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞」は、時間が経過すると、ドパミン神経細胞に変化する。
人間の体は約60兆個の細胞が集まってできている。これら細胞は元々「受精卵」というたった1つの細胞だった。
受精卵は無数に分裂していく。そして、皮膚や臓器、骨などへと変化していく。一度、皮膚などになってしまった細胞は、受精卵の戻ることはない。
iPS細胞は、皮膚などの細胞に3~4種類の「特定の遺伝子」を組み込むことによりつくられる。
このiPS細胞は皮膚や臓器、骨などに変化する能力をもっている。
iPS細胞には受精卵と同じ特性がある。
今回の治験では、事前に、健康なボランティアの方から提供された細胞より「iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞」をつくっていた。
手術では、「iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞」約240万個がパーキンソン病患者の脳内に移植された。
頭蓋骨(前頭部)に直径12mm程の穴を開け、ここから「iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞」を注入した。
3本の刺入経路を用い、1本の刺入経路あたり2mm間隔で4か所、合計12か所に注入した。
日本の医学・薬学は基礎研究では、優れた実績を誇っている。
しかし、臨床や実用化では、欧米先進国に後れをとってしまっている。
これは失敗を許さないという土壌があるのが原因の一つだ。
日本には、科学技術の進歩を引っ張る活動をしている団体が多い。
iPS細胞のような技術は、多くの難病患者のためにも、進歩させる必要があるのではないのだろうか?