三菱自動車は26日、臨時取締役会を開き、金融証券取引法違反(有価証券報告書への虚偽記載)の容疑で逮捕されたカルロス・ゴーン容疑者(64)の会長職と代表取締役の解任を全会一致で決めた。
三菱自動車の会長職は、次の株主総会まで、暫定的に益子修(ますこ おさむ)CEO(最高経営責任者)が兼務する。
益子氏は締役会の後、ゴーン容疑者の解任理由について、「日産の信頼を失っており、(三菱自動車の会長職としての)業務遂行が困難になっている。このまま会長職に就けることは当社を信頼低下のリスクにさらすことになる」と述べた。
ゴーン容疑者は22日、三菱自動車の筆頭株主である日産自動車の会長職と代表取締役も解任されている。
ゴーン容疑者は、三菱自動車、日産自動車、ルノーの経営に大きく関与していた。
3社の経営トップは29日、今後のあり方について協議する。
三菱自動車、日産自動車、ルノーの3社は現在、資本提携関係にあり、ルノーが主導的な立場にある。
日産自動車はルノーの株式15%を保有している。また、三菱自動車の筆頭株式で34%を保有している。
カルロス・ゴーン氏の逮捕により、このパワーバランスに変化が生じてきた。
「ルノー&フランス政府」と「日産自動車&三菱自動車」に分かれ、主導権争いが行われ始めた。
三菱自動車は日産自動車と共に行動することになる可能性が高い。現在の自動車業界は大きな資本力がないと生き残ることはできないためだ。
日産自動車は1998年、約2兆円もの有利子負債を抱え、経営危機に陥ってしまう。この時に助けたのがルノーだ。
ルノーは約50億ユーロ(約6,430億円)を出資し、日産自動車の株式36.8%、日産ディーゼル工業の株式22.5%を取得するとともに、日産自動車の欧州の販売金融会社も取得した。
ルノーからカルロス・ゴーン氏が派遣され、新たな最高経営責任者に就任した。
ゴーン氏らのチームはリストラを進めていった。
そして、2003年6月には負債を完済した。
ここまでは良かったのだが、その後、日産自動車の利益はルノーに吸い取られてしまう仕組みが出来上がってしまう。
日産自動車の連結売上高は11兆9,511億円、ルノーの連結売上高は426億ユーロ(約5兆4,000億円)である。日産自動車はルノーの倍以上の売上高がある。
三者協議(三菱自動車・日産自動車・ルノー)では、日産自動車はルノーに対して同等以上の関係を求めるとみられる。資本提携の解消も視野に入れているかもしれない。
フランス政府が保有しているルノーの株式を、日産自動車が「適正な価格」で取得することができれば、日産自動車にとっては最高の結果だ。そうすれば、ルノーが持っている日産自動車株式の議決権を無効にすることができる。更に、フランス政府の介入も防ぐことができる。つまり、日産自動車が完全に自由に動けるようになる。
ゴーン氏の日産自動車の会長職解任を受け、フランスのルメール経済・財政相は25日、三菱自動車・日産自動車・ルノーの資本提携関係について、「現状通りが望ましい。日本側とも合意している」と主張し、早速圧力をかけてきている。
三者の関係がどうなるのか、まだ不透明なままだ。
合法であるとはいえ、ルノー(フランス政府)が日産自動車に対して行っているのは植民地支配と同じである。
ただ、軍事力(武器)を使うか、経済力(金)を使うかの違いである。
グローバル化を進めるということは、日産自動車のような企業が増えるということである。
悪魔は天使の仮面を被ってくる。