理化学研究所などの研究グループは18日、「
情報元:「滲出型加齢黄斑変性に対する他家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞懸濁液移植に関する臨床研究」の移植後1年の経過観察終了の報告について | 理化学研究所
同研究グループは、他人のiPS細胞から作られた網膜細胞の移植手術を「
1年余りが経過し、今回、全員経過は良好だと発表された。4人の視力はほぼ維持され、1人は向上した。1人の患者に軽い拒絶反応があったが、薬剤で抑え込めた。懸念されていた癌
プロジェクトリーダーの高橋政代氏は、「目的は達成された。これで他人のiPS細胞の安全性は確認できた。実用化に向け7合目まで来た」と評価した。
目の構造、25:
ヒトは物を見るとき、光を網膜という組織で刺激として受け取り、その信号を脳に送るために視神経に伝達する。その網膜の中心部分が黄斑である。
加齢黄斑変性には「萎縮型」と「
「萎縮型」は、黄斑の組織が加齢とともに萎縮する。症状はゆっくりと進行するため、視力は少しづつ低下する。50歳以上の約0.1%が発症している。
「滲出型」では、網膜のすぐ下に新しい血管(新生血管)ができ、黄斑にダメージを与える。新生血管は非常にもろいという特徴がある。この血管から出た液体が黄斑の組織にダメージを与えて、視覚障害を引き起こす。症状の進行が早いため、視力低下は急速に進む。50歳以上の約1.2%が発症している。
iPS細胞とは、人工的に作られた細胞で、皮膚や臓器、骨などに変化する特性をもっている。皮膚などの細胞に3~4種類の「特定の遺伝子」を組み込むことによって作られる。
理化学研究所などの研究グループは、
京都大学で備蓄されていた「他人の細胞」から作った拒絶反応が起きにくい iPS細胞から網膜細胞を作成した。この網膜細胞を含む溶液を注射器で目に注入、移植手術を行った。
iPS細胞には、「癌化」「拒絶反応」「日数」「コスト」という課題があった。
iPS細胞の作成にはかなり長い日数がかかる。まず1〜2ヶ月かけてiPS細胞を作り、そこから目的細胞の作成にさらに数ヶ月かかる。この対策として、免疫応答の少ない人から作った細胞をストックしておく「
今回の臨床研究により、「癌化」「拒絶反応」「日数」に関してはほぼクリアできた。
「コスト」に関しては、京都大学で研究中であるが、保険制度の適用レベルまでは現時点では難しい状況だ。
研究チームは視力が悪化するのを防げた点で有効だと評価した。ただ、薬の投与も同時に続けており、移植の効果がどの程度なのかは判断しにくいという。
この治療法は、ぜひ完成させて欲しいものである。