日本産科婦人科学会(日産婦)は22日、母体血胎児染色体検査(NIPT)について、検査の施設拡大を認める新指針の運用開始を保留すると発表した。
厚生労働省から、NIPTに関する審議会を設置する方針が示され、かつ、同審議会での議論を踏まえての対応を要望されたため、その意を汲み、ひとまず保留を決めた。
情報元:新しい「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に関する指針」に関するお知らせとお願い|公益社団法人 日本産科婦人科学会
母体血胎児染色体検査(NIPT)のイメージ、作成:素人が新聞記事書いてみた
母体血胎児染色体検査(non-invasive prenatal genetic testing; NIPT)とは、妊娠中に胎児の状態を調べる検査の一つである。マスコミは「新型出生前診断」と呼んでいる。
母体の血液を採取し、胎児の染色体を調べる。母体の血液中には、胎盤から漏れ出てくる胎児の DNA が少し混ざっている。
調べられるのは、13トリソミー、18トリソミー、21トリソミー(ダウン症候群)の 3種の染色体の数的変化のみ。この3種で、染色体異常症をもって生まれてくる赤ちゃん全体の65%ほど。
母体血胎児染色体検査(NIPT)を受けることができるのは、出産予定日の年齢が35歳以上の方など。検査は妊娠10~22週の間に行う。安全性は高い。費用は20万円前後。
検査結果(染色体の変化の可能性)は「陽性」「陰性」で表される。しかし、本当は染色体に変化がないのに、「陽性」と判定される可能性もある。この場合、診断の確定には、羊水検査や絨毛検査(じゅうもう けんさ)を行う必要がある。
現在、母体血胎児染色体検査(NIPT)を実施しているのは大学病院や総合病院など約90施設。検査実績は昨年9月時点で約6万5千件。日本産科婦人科学会は施設拡大を行おうとしていた。
母体血胎児染色体検査(NIPT)には2つの問題点がある。
一つは、無認可施設が急増したこと。事前に十分な遺伝カウンセリングを受けることなく、検査を行うケースが増加している。なかには、結果のみ知らせるという事例も。
もう一つは、倫理的問題。妊娠中絶につながるケースもあることから、「命の選別」であるという意見も出ている。
日本小児科学会や日本人類遺伝学会などは、母体血胎児染色体検査(NIPT)に強く反対している。
無認可施設が急増に関しては、早急に対応する必要がある。妊婦に精神的な不安を与えてはいけない。
倫理的問題に関しては、人それぞれに意見がわかれる。正解はない。ただ...2つの興味深い情報がある。
①母体血胎児染色体検査(NIPT)は受けたい人が多く、予約が取りずらい
②胎児の異常が確定した妊娠のうち、96%は中絶をした
情報元:新型出生前診断:異常判明の96%中絶 利用拡大 - 毎日新聞
この問題は国民的に議論する必要がある。