筑波大学や藤田医科大学などの研究グループは、経皮感作小麦アレルギーの発症に関わる遺伝子の特定に成功した。
アレルギーとは、特定の抗原(アレルゲン)に対して、免疫反応が過剰に起こるものである。ハウスダストやダニ、花粉、小麦など様々なものがアレルゲンとなる。
発症メカニズムは、アレルゲンが体中に入ると異物とみなして排除しようとする免疫機能がはたらき、「IgE抗体」という物質が作られる。この状態を「感作」という。この後にアレルゲンが体内に入ると、アレルギー症状を引き起こすようになる。
アレルギーの発症には、アレルギー物質(アレルゲン)が口から入ることにより発症する「経口免疫寛容」と、皮膚から入ることにより発症「経皮感作」がある。
アレルギー疾患は遺伝と環境の両方が関わって発症する。
小麦アレルギーは、小麦に含まれている「グルテン」というタンパク質が原因で発生する場合が多い。
以前は、経口免疫寛容により発生することばかりだった。
しかし、平成21年ころより、小麦を含む石鹸を使用した後、パンやパスタなどの小麦含有食品を食べると、じんましんや呼吸困難などを引き起こす事例が確認されるようになった。「経皮感作小麦アレルギー」である。
研究グループは、525例の経皮感作小麦アレルギー患者と日本人一般集団3244名から得られた遺伝子型情報を使用して、全ゲノム関連解析注と確認のための追認解析を行った。
その結果、6番染色体のHLA-DQ領域と16番染色体のRBFOX1領域に、関連を示す領域があることがわかった(フローチャートの右下)。
HLAは免疫応答の鍵となる遺伝子で、極めて多くの種類があり、個人差がある。これが経皮感作小麦アレルギーへのなりやすさ、なりにくさに関係していると考えられる。
また、経皮感作小麦アレルギーになりやすいHLA型としてHLA*DQB1*03:02とDQB1*03:03、なりにくいHLA型としてHLA*DQB1*06:01とDQB1*03:01をそれぞれ特定した(フローチャートの右上)。
同研究は、小麦アレルギーに対して全ゲノム解析を応用した世界で初めての成果である。
今後、食物アレルギーの発症メカニズムの解明、治療法や発症予測法の開発などに貢献するものと期待される。