先日、自民党の支持者による憲法改正の集会に参加したときの話である。ちなみに、筆者は自民党を支持している訳ではない。
彼らは以下のような勇ましい言葉を発し、改憲を訴えていた。
・戦勝国に押し付けられた憲法をいつまで大事にしている!奴隷か!
・憲法9条は日本人に「殴られても殴りかえすな」と言っているのと同じだ!
集会も終わり、帰ろうとした時のことである。
選挙制度について、何人かが雑談していた。盗み聞きをするつもりはなかったのだが、以下のような言葉が聞こえてきた。
「選挙の区割りは昔の中選挙区制の方がいいよな...」
?
一瞬、自分の耳を疑ってしまった。
中選挙区制とは、一つの選挙区から複数人を選出する選挙制度である。衆議院選挙においては平成6年(1994年)まで用いられていた。参議院選挙では現在も一部の選挙区で用いられている。
筆者はその人たちと知り合いではなかったが、思い切って話しかけてみた。
理由を聞くと、あるネットの保守チャンネルでそう主張していたから、中選挙区制の方が良いと信じるようになったという。実は、改憲を強く希望している人でも、中選挙区制が良いという考えの人は多い。
この時、ちょっとした人だかり?ができたので、集まってきた人たちにも質問してみた。12人中、6人は中選挙区制に戻すべきだとの意見。2人は戻すべきではない、残り4人はわからないだった。
選挙権のある方限定の調査です。
— 素人が新聞記事書いてみた (@np_ama) November 7, 2019
現在の憲法は、何らかの改正をする必要があると思いますか?
選挙権のある方限定の調査です。
— 素人が新聞記事書いてみた (@np_ama) November 7, 2019
平成6年(1994年)まで衆議院選挙において用いられていた「中選挙区制」を復活すべきだと思いますか?
しかし、「中選挙区制を復活すべきだ」という意見の方が約半数もいる。
憲法改正の発議(改憲の国民投票)をするためには、衆参両院でそれそれ2/3以上の議員が改憲案に賛成する必要がある。現在の政治状況を考えれば、自民党の議席を増やすしかない。
中選挙区制度の場合、2人区では改憲派が2議席を得る必要がある。3人区では2人、4人区では3人が目標といえる。平均されるので、いくつかの選挙区はこれを下回ってもいいが。
これは非常に厳しい。参議院議員選挙をみればわかる。
参議院議員の任期は6年であり、3年ごとに半数を改選する。参議院議員選挙は選挙区と比例代表に分かれている。
有権者は選挙区と比例代表の投票をする。選挙区では立候補者1名を自書して投票する。比例代表では政党名か立候補者1名の氏名を自書して投票する。
選挙区には1人しか当選しない小選挙区と、複数人(現在は2~6人)が当選する中選挙区がある。比例代表は、各政党が獲得した投票数に比例して議席を配分する。
参議院議員選挙は小選挙区制と中選挙区制、そして比例代表制(事実上の大選挙区制)が混合された選挙である。
直近、令和元年7月21日に日本で行われた「第25回参議院議員通常選挙」は、改選数124。内訳は選挙区制74(小選挙区32、中選挙区42)、比例代表制 50だった。
自民党の獲得議席数は57。小選挙区、中選挙区、比例代表の獲得議席数とその獲得率は以下のとおり。
・小選挙区22/32(68%)
・中選挙区16/42(38%)
・比例代表19/50(38%)
改憲のためには、中選挙区制と比例代表制は邪魔な仕組みなのだ。
マスコミがこの事実をほとんど報道しないため、改憲派でも知らない人が多いのが現状である。