東北大学と英国・カーディフ大学の研究グループは、菌類が決断・記憶能力を持つことを発見した。
菌類がエサである木片を見つけたとき、その木片に引っ越すか、もとの木片にとどまるかを、新しい木片の大きさによって決断していること。更に、新しい木片の方向を記憶する能力があることがわかった。
無菌培養された様々な菌類、出典:Wikipedia
菌類とは、カビ・キノコ・酵母などの真核生物(しんかくせいぶつ)の一群をいう。原核生物の「細菌(バクテリア)」と区別するため「真菌」と呼ばれることもある。
真核生物とは、動物、植物、菌類、原生生物などで、細胞の中に細胞核と呼ばれる細胞小器官を有する生物のことである。生物は真核生物と原核生物に大別される。
菌類の体は、 菌糸(きんし)と呼ばれる1列に配置する細胞列で、糸状の構造となっている。カビやキノコなどは、主に菌糸が寄り集まったもので構成される。
菌糸からなる菌類の体を「菌糸体」という。
菌類は最大で数千ヘクタールにも及ぶ菌糸体を土壌中にはりめぐらせるため、地球上で最大の生物ともいわれている。
菌類は生態系において、物質を生態系のサイクルに戻す分解者としての役割を担っている。他の生物では分解が難しい物質も分解することが可能だ。
更に、多くの菌類は他の生物と共生している。菌類は無くてはならないものである。
...が、ヒトや動物にとっては病原体となるものもある。水虫・たむしなどは細菌により引き起こされる。
菌糸体が成長した様子、原典:東北大学
研究グループは、枯れ木や落ち葉の分解に主要な役割を果たす担子菌類(たんしきんるい)で実験を行った。
この菌糸体を定着させた木片(接種源)を土壌シャーレに置き、菌糸体が土壌に伸びてきた後、新しい木片(エサ)を少し離れた場所に置き、菌糸体に見つけさせた。
しばらく培養すると、小さいエサを見つけた菌糸体は、エサを見つけた後も接種源の木片から離れずに周囲の探索を続けた。
一方、大きいエサを見つけた菌糸体は、周囲の探索は終了し、新しいエサに集中的に定着し始めた。
1カ月後、接種源の木片を新しい土壌シャーレに移した。
小さいエサを見つけた菌糸体は、まだ接種源に残っており、再び生長を開始した。
大きいエサを見つけた菌糸体は、すでに新しいエサに完全に引っ越していたため、生長は見られなかった。
この結果、菌糸体は新しいエサの大きさによって自分の行動を決断していることが示された。
接種源からの生長が見られた際には、もともとエサがあった方向へより多くの菌糸生長が見られた。
菌糸体はエサのあった方向を記憶していると思われる。
菌類には脳も神経もないのに不思議だ。
菌類は9~10億年前には存在していたというのが定説。化石が発見されている。
長い間生き延びてきた生物種には、それを可能にするための『何か』がある。
それらを探究することにより、新たに発見されることは多い。