東京大学の沼澤宏治大学院生らの研究グループは、がんを短時間で高感度に検出できる蛍光試薬の開発に成功した。
葉酸受容体(葉酸から情報を受容するタンパク質)を標的分子とする卵巣がんなどの発見に、効果を発揮するという。
動物実験では、蛍光試薬の投与後30分以内に、はっきりとがん部位を蛍光検出することに成功した。今まで蛍光試薬では、数時間から一日程度の長い時間待つ必要があった。
蛍光試薬のイメージ(図1)、提供:東京大学
葉酸受容体は、卵巣がんや子宮内膜がんでの過剰発現が報告されている。
研究グループは、蛍光試薬の正常組織に対する非特異的な吸着を抑えることで、蛍光試薬の排泄を待つ時間を短縮し、リアルタイムかつ高感度に蛍光観察ができると考えた(図1)。
蛍光試薬「FolateSiR-1」とコントロール化合物「FolateSiR-2 」(図2)、提供:東京大学
研究グループは、これまで多くの蛍光色素の開発に成功していきた。その技術力をもとに、葉酸受容体に対するリガンドである葉酸とさまざまな蛍光団とを水溶性の高いペプチドリンカーで結合させた分子をデザイン・合成した。
培養細胞で評価したところ、正常細胞への取り込みが見られなかった近赤外蛍光を発する蛍光試薬「FolateSiR-1」を開発することに成功(図2)。
また、分子構造が類似し、既存の蛍光試薬と同様な特性を持つ「FolateSiR-2」をコントロール(対象)化合物として(図2)、評価を行った。
KB細胞への蛍光試薬の応用(図3)、提供:東京大学
葉酸受容体を細胞膜上に発現しているKB細胞(ヒト口腔がん細胞)へ、FolateSiR-1及びFolateSiR-2を応用してみた。
FolateSiR-1は選択的に細胞膜上の葉酸受容体を蛍光検出することができた。FolateSiR-2は葉酸受容体以外の細胞内部位への取り込みが観察された。
更に葉酸を加えると、FolateSiR-1は葉酸に置換され蛍光が見られなくなった(図3、左から2番目)。FolateSiR-2は蛍光が検出されたことから、葉酸に置換されない、葉酸受容体以外の細胞内部分に吸着したと考えられる(図3、1番右)。
開発した蛍光試薬の皮下担がんモデルマウスへの応用(図5)、提供:東京大学
KB細胞を用いた皮下担がんモデルマウスに、FolateSiR-1及びFolateSiR-2を静脈内投与した。
FolateSiR-1は、30分以内に、高感度でがん部位を蛍光検出することに成功した。
FolateSiR-2は、がん部位以外の体全体からも蛍光が観察され、蛍光試薬の投与6時間においても、がん部位からの強い蛍光と共に体全体からの蛍光が観察された。
同研究成果が実用化されれば、手術中に目では見分けにくい"がん"を蛍光検出することが可能になる。
国はこういう研究にこそ、手厚い支援をすべきだ。反日左翼教授の分をまわしてほしいものである。