県立広島大学と近畿大学の研究グループは、鞭毛(べんもう)で水中を動く単細胞生物「緑藻クラミドモナス」について、新たな発見をした。
鞭毛に欠陥があるため泳げない細胞に、特殊な顕微鏡で深海6000メートル級の静水圧をかけたところ、泳ぎ出す様子を観察できた。
今回の成果は、ヒト精子の治療など、医療技術への応用につながる可能性があるという。
鞭毛は毛状の細胞小器官で、遊泳のための推進力を生み出す。動植物の精子から藻類や原生生物に至るまで広く見られる。
ちなみに、本数が少ないものを鞭毛、短い毛が多数並んでいるものを「繊毛(せんもう)」という。
卵子(右下)に到達した精子、原典:pdimages.com
ヒトの体中にも鞭毛や繊毛があり、これらが正常に機能しなくなると病気の症状が現れる。
精子の鞭毛が動かないと不妊症に、気管の繊毛では慢性気管支炎、大脳の繊毛では水頭症になる。
研究グループによると、単細胞生物「緑藻クラミドモナス」は、ヒトの鞭毛や繊毛と"ほぼ同じ仕組み"で動いている。
このため、今回明らかとなった「静水圧による鞭毛運動の活性化法」を応用すれば、理論上、なんらかの理由で動かないヒトの鞭毛や繊毛の不調を回復できる可能性があるという。
研究グループは引き続き研究を進め、新たな医療技術の創成を目指す。
泳げなかった「緑藻クラミドモナス」が、なぜ高水圧により再び泳ぎ出したのか...
本当に不思議である。
人類は知らないことが、まだ、たくさんあるような気がする。