筑波大と理化学研究所の研究グループは、マウスを冬眠に似た状態にすることに成功したと発表した。マウスは本来冬眠をしない。
冬眠に似た状態を誘導する神経細胞があるという。
冬眠とは、動物が活動を停止、若しくは、極めて不活発な状態になり、食料の少ない冬季間を過ごす生態のことを指す。
体温は低下するが、種によりその差は大きい。
発生メカニズムは不明。
通常マウスと冬眠に近い状態のマウス(右)、手前は体温を示す画像(温度が低い方から青→緑→黄→赤)、筑波大学提供
研究グループは、マウスの脳の視床下部(ししょうかぶ)に、興奮させると体温・代謝を著しく低下させる神経細胞があることを発見した。
遺伝子操作により、この細胞を薬で刺激できるマウスを作製。薬を注射し、その状態を調べた。
室温は23度に固定した。
12時間後、マウスは体温は24度前後まで低下し、ほぼ動かなくなった。酸素の消費量も8分の1前後まで下がり、冬眠に似た状態となった。
1週間後、マウスは以前と同様に活動を再開した。体の不具合は見られなかった。
研究グループは、マウスより体調が10倍大きいラットで、同様の実験を試してみた。
結果は、マウスのときと同様だった。
冬眠に似た状態にする神経細胞は、ヒトを含め、多くの哺乳類にあるという。
研究グループによると、人間での人工冬眠技術が確立すれば、救急医療で臓器損傷が進むのを防いだり、病気の進行を遅らせたりと、様々なことに応用できるという。
今回の研究成果は、論文として英国の科学誌「ネイチャー」に掲載された。
情報元:A discrete neuronal circuit induces a hibernation-like state in rodents | Nature
ヒトにも冬眠状態になる仕組みが備わっている...と主張する研究者は多い。実際、遭難して長時間の低体温状態になっても、生存した人はいる。
夢のある技術ではある。