名古屋大学の町田洋助教らの研究グループは、二酸化炭素(CO2)を火力発電所の排ガスなどから、少ないエネルギーで回収する新技術を開発した。
独自に開発した「H2ストリッピング再生技術」と「相分離型吸収剤」により、回収時に必要とされるエネルギーを、従来比4分1ほどまで抑えることができるという。世界最高水準。
「H2ストリッピング再生技術」を利用したCO2回収の概要、名古屋大学提供
火力発電所の排ガスなどからのCO2を回収する従来法は、吸収塔で40度ほどの燃焼排ガスからCO2のみを吸収。その後、再生塔で100度を超える温度で純CO2を再生するというものだった。
3-4GJ/ton-CO2ものエネルギーが必要だった。
研究グループは、再生塔へ水素を供給する「H2ストリッピング再生技術」を開発。これにより、再生塔において85度でCO2再生が可能となる。
更に「相分離型吸収剤」を併用することにより、吸収塔50度、再生塔60度で運転可能。
1GJ/ton-CO2未満のエネルギー。
「H2ストリッピング再生技術」では、再生塔の下部にH2ガスを供給する。
その結果、塔内のCO2分圧が低下。再生が促進され、CO2再生温度が低くなる。
分離型吸収剤とは、CO2吸収時に2液相に分離する吸収剤。この特性により、吸収塔の温度を今までより高い温度で運用できる。
一方、再生塔ではエーテル相の再生をアシスト。再生塔の運転温度を低下させることができる。
つまり、分離型吸収剤は、吸収塔と再生塔の温度差を少なくする。
研究グループによると、脱炭素型の火力発電、カーボンリサイクルなどへ貢献が期待されるという。
同技術により、急激に社会が変化するということはない。しかし、大きな成果であることは確かだ。
日本では石油がほとんど産出されない。
こうした技術の積み重ねにより、石油依存度を下げていく努力が必要である。簡単な話ではないが。