東京海洋大学の吉崎悟朗教授の研究グループは、ニジマスの生殖幹細胞を試験管内で増殖させることに成功した。
全動物を通じて初。もちろん世界初。
1匹の雄ニジマスの細胞から卵や精子をつくり、1700匹のニジマス稚魚をふ化させた。稚魚は順調に成長した。
試験管で増殖させた生殖幹細胞から生まれたニジマス、東京海洋大学提供
生殖幹細胞とは、精巣内にある、卵(卵子)や精子のもとになる細胞。
研究グループは、魚類雄の精巣から生殖幹細胞を取り出し、卵や精子をつくることに成功している。
ヤマメがニジマスを産むなど異種間でも可能。
ただし、この方法では移植の度に魚を殺さければならない。高級魚や絶滅危惧種などの場合、有効な方法とはいえない。また、⼩型の⿂種では十分な⽣殖幹細胞が⼊⼿できないという問題点もあった。
このため、生殖幹細胞を試験管内で増殖させる技術の開発が期待されていた。
従来法と新しい方法の概要、 東京海洋大学提供
研究グループは、雄ニジマスの精巣から「セルトリ細胞」を取り出し、その培養細胞株、つまり試験管内で増殖可能な細胞を作成した。
セルトリ細胞とは、精巣内で⽣殖幹細胞を取り囲み育てている細胞。
セルトリ細胞をシャーレの底⾯に敷き詰め、⽣殖幹細胞を重層し、培養を試みた。
18度、5%⼆酸化炭素存在下で32⽇間培養したところ、生殖幹細胞は元の数の100倍にまで増殖した。
次に、⽣殖幹細胞を28⽇間培養した段階で、ふ化直後の三倍体ニジマス(不妊であり、⾃らの卵、精⼦を⽣産しない)腹腔内へと移植した。
⽣殖幹細胞は孵化仔⿂の⽣殖腺へと移動して、雌体内では卵形成、雄体内では精⼦形成を開始した。
2年後、雌は卵を、雄は精⼦を⽣産。これらの卵と精⼦を受精させたところ、培養細胞に由来する正常なニジマスが⽣まれた。外部形態は通常のニジマスと同じ、染⾊体組成やDNAにも異常はなかった。
情報元:ニジマス雄1匹から卵と精子作り1700匹ふ化 試験管で生殖幹細胞増殖成功 - 毎日新聞
将来的には、クロマグロなどの大型魚での実用化を目指す。大型魚の親魚を飼育しなくても、代理親魚となる小型のサバの仲間さえいれば、次世代を大量生産できるという。
絶滅の危機に瀕している⿂種の保全にも、貢献することが期待される。
凄い技術である。
同技術は哺乳類にも応用できると思われる。
人間でやったらと考えると、少し怖くはなるが。