カリフォルニア大学アーバイン校(UCI)の研究グループは、アルツハイマー病による空間記憶障害の原因を解明した。
嗅内皮質(きゅうないひしつ)の活動が低下することにより、記憶の中枢である海馬(かいば)の空間識別機能に障害が起きるという。
嗅内皮質と海馬は共に、脳の海馬体(かいばたい)にある。海馬体は左右に一対ずつ存在し、ヒトでは直径1センチ、長さも5センチほど。
脳を底部から見た図、赤色が「海馬体」の位置、出典:Wikipedia
アルツハイマー病とは、脳が萎縮していく病気。
65歳以上の約6%が罹患している。現時点では、有効な予防法および治療法はない。
アルツハイマー病患者の多くは徘徊などを引き起こす「空間記憶障害」を発症し、介護者の大きな負担となっている。
徘徊以外の主な症状には、記憶の低下、判断力の低下、感情および人格の変化などがある。
マウス、出典:Wikipedia
研究グループは、日本の理化学研究所が開発した、アルツハイマー病モデルマウスで実験を行った。
同マウスが記憶行動を行っている際、脳の活動を電気生理学的手法により解析した。
その結果、脳の記憶中枢である海馬が本来持っている異なる場所を見分けるための機能、いわゆる「マッピング機能」が低下していることを突き止めた。
研究グループは、この海馬の障害は「嗅内皮質」と呼ばれる脳部位の活動の低下により引き起こされることを明らかにした。
つまり、「嗅内皮質の活動を回復させる手法」を開発すれば、アルツハイマー病患者の空間記憶障害の治療につながると思われる。
アルツハイマー病は、高齢化社会における最も深刻な疾患の1つ。徘徊をする患者を減らすことができれば、社会にとって大きな利益となる。
年をとっても、健康でいたいものである。