慶應義塾大学や滋賀医科大学などの研究グループは、サルに子宮移植をし、出産させることに成功した。
ヒト以外の霊長類では世界初。
研究グループは国内初となるヒトでの子宮移植を目指すという。
サルでの子宮移植のイメージ、 慶應義塾大学提供
研究グループは平成21年より、カニクイザルで子宮移植の研究を開始した。
このサルは体重約3キロと非常に小さいため、検査や投薬が十分に行えず、術後管理が難しかったという。
サルはヒトに近い。生物学上、ヒトは霊長目(サル目)である。
平成29年2月、子宮を取り除いたメスのカニクイザルに、免疫のタイプが近い別のカニクイザルの子宮を移植した。
子宮が機能し始めた後、体外受精させた受精卵を子宮の中に入れた。
平成30年5月に最初の妊娠を確認したが、流産。その後、再び妊娠を確認したがまた流産した。
令和2年5月、3回目の妊娠で帝王切開により子ザルが1匹が生まれた。
子ザルは生後半年経つが、奇形や病気はみられず、元気に育っているという。
子宮移植後に母体に免疫抑制剤を投与したが、子ザルに悪影響は出ていない。
子宮移植したサルから生まれた子ザル、滋賀医科大学提供
生まれつき子宮がない、若しくは、がんなどで子宮を摘出した20~30代の女性は、国内に約6万人いるとみられる。
ヒトへの子宮移植は海外では既に行われている。
研究グループによると、平成26年にスウェーデンで子宮移植を受けた女性が初めて出産。その後、米国などで80例余りの手術が実施され、少なくとも37人の赤ちゃんが生まれているという。
子供が欲しくても生めない女性には、希望の光をもたらすと期待される。
一方、安全性などの医学的な課題、健康なドナーから子宮を摘出するなど倫理面での課題は残る。
子宮移植に賛成か?
人それぞれに考えは異なるだろう。
筆者には答えはわからないが、十分な議論はすべきだと思う。