東京大学医科学研究所の中西真教授らの研究グループは、「GLS1阻害剤」という薬で老化細胞を選択的に除去することに成功した。
老齢マウスに投与した結果、様々な臓器や組織で老化細胞が除去され、加齢現象や病気の改善がみられた。
マウス線維芽細胞、左側は正常な細胞、右側は老化細胞、原典:Wikipedia
老化細胞とは、細胞分裂が止まった細胞のことである。老化前と比べ、平坦で大きな形態に変わる。
老化細胞は加齢とともに増えていき、体の機能低下や病気を引き起こす。
老齢マウスから老化細胞を除去すると、動脈硬化や腎障害などの発症が遅れることは分かっていた。
しかし、薬により除去する方法は今まで見つかっていなかった。
研究グループは、老化細胞の生存に「GLS1」という酵素が必要であることを発見した。
老化細胞内は酸性に傾いており、GLS1が過剰に働いて中和することにより、細胞死を維持していた。
つまり、老化細胞はGLS1がないと死滅する。
老齢マウスに「GLS1阻害剤」を投与してみると、様々な臓器や組織で老化細胞が除去された。
老化細胞が増加した特徴である、腎臓の糸球体硬化、肺の線維化などの症状も改善した。
棒につかまらせる実験では、老齢マウスは投与前には約30秒だったが、投与後には約100秒まで伸びた。
若いマウスは約200秒だった。
GLS1阻害剤は現在、がん治療薬の候補として臨床試験が進められている。
研究グループは、同阻害剤が認知症など他の加齢性疾患にも有効とみている。今後、ヒトでの実用化を目指したいとしている。
情報元:Senolysis by glutaminolysis inhibition ameliorates various age-associated disorders | Science
今回の成果により、ヒトの健康寿命を簡単に伸ばせる可能性がでてきた。もちろん、マウスで成功しても、ヒトで成功するとは限らないが。
国には、このような研究を積極的に支援してほしいものである。
誰でも、生きている間は健康でいたいから。