国際労働機関(ILO)は25日、新型コロナウイルス感染症の拡大による労働市場への影響を分析した報告書を公表した。
拡大前と比べ、世界の労働時間が約8・8%減少したと推計した。
国際労働機関は、世界の労働者の労働条件と生活水準の改善を目的とする連合国(国連)の専門機関。
大正8年(1919年)創設。本部はスイスのジュネーヴ。平成31年(2019年)3月現在、加盟国は187ヵ国。
最近では、世界の労働時間に関して、3か月毎に推計し情報公開している。
国際労働機関(ILO)本部、スイス・ジュネーブ、出典:Wikipedia
令和2年の世界の労働時間は、感染拡大前の令和元年10~12月に比べ、約8・8%減少したと推計した。
週48時間働く労働者、約2億5500万人が職を失ったのに相当するという。リーマンショック後の平成21年の4倍ほど。
労働所得は8・3%ほど減少。減少額は約3兆7000億ドル(約384兆円)で、世界の国内総生産(GDP)の4・4%に相当。
仕事を失った人は、男性が約3・9%、女性が約5・0%。
年齢別では、15~24歳までの若者が約8・7%と深刻、25歳以上は約3・7%だった。
業種別では、宿泊業と飲食業が最も影響を受け、20%を超える雇用が失われた。小売業と製造業がそれに続いた。一方、情報通信や金融・保険では雇用が増えた。
仕事を失った人のうち71%(8100万人)は、就職活動をしていないという。
国際労働機関は、再就職が困難になったことに加えて、働く意欲を失った人が増加したとみている。
国際労働機関は今年の世界の労働時間について、令和元年10~12月に比べ、3%減少すると予想。ワクチン接種が遅れた場合は4・6%減。
回復基調になるのは今年後半とした。ただし、不確定要素も多いと付け加えた。
新型コロナウイルス感染症の世界的流行(パンデミック)は、人類にとって不幸な出来事である。
これと同様に、筆者は働く意欲を失った人が増えたことに危機感を感じる。
歴史を見ると、希望を失った人が増えると、社会が不安定になり戦争や紛争、テロ、革命などが起こりやすくなる。
苦しい状況でも、心が折れなけば「希望」は残っている...と筆者は思う。