岩手大学の宮崎雅雄教授らの研究グループは、ネコのマタタビ反応は蚊が嫌がる成分を体につける行動であることを解明した。
300年来の謎が解けた。
マタタビ反応とは、ネコがマタタビを嗅ぐと体を擦り付け転がる反応である。300年以上前に出版された貝原益軒の農業指南書「菜譜」にも記述がある。
マタタビ反応はネコ科全般に見られるが、なぜ、このような行動をするのか謎だった。
研究グループは、ネコがマタタビに喜んでいるだけなのか疑問を持っていた。これが研究を始めるキッカケとなった。
まず、マタタビの成分を抽出し、ネコがどの成分に反応しているのかを調べた。
結果、ネペタラクトールという物質に反応していることを突き止めた。
ネコだけでなく、アムールヒョウやジャガーなど大型ネコ科動物でも、マタタビの成分によりマタタビ反応が確認された。
ネコと大型ネコ科動物は、約1,000万年前に生物種が分かれ、それぞれ独自に進化した。マタタビ反応はネコ科動物の祖先が既に獲得していたと考えられる。
研究グループは、「マタタビ反応には何らかの重要な機能がある」という仮説をたてた。
ネペタラクトールを塗ったネコと塗らないネコを比較した結果、塗ったネコには蚊が止まりにくくなっていた。
ネペタラクトール500µgを塗ったネコでは、止まる蚊の数がおよそ半分となった。
ウイルスや寄生虫の多くは、蚊を媒介として感染する。
ヒトを最も多く殺している生物は蚊である。世界で1年間に約75万人ほど。
ヒトにネペタラクトールを塗っても、蚊は止まりにくくなった。効果は約30分だった。
ヒトには、ネペタラクトールの匂いはわからない。
今後、ネペタラクトールを利用した新しい「虫よけ」が開発される可能性はある。
ネコのマタタビ反応と「虫よけ」が繋がるとは思わなかった。
このような事例は他にもあるだろう。
人類が知らないことは、まだ多い。