ベイルート港爆発事故が、核兵器を除けば、人類が引き起こした爆発の中で最大級だったことが分かった。
北海道大学の日置幸介(へき こうすけ)教授らの研究グループが解析。英国の科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に論文が掲載された。
ベイルート港爆発事故とは、令和2年(2020年)8月4日に、レバノンの首都ベイルートにあるベイルート港で発生した爆発事故。
死者は203人、負傷者は6,500人超。
被害は首都ベイルートの半分に及び、最大で30万人が家を破壊されて住む場所を失った。日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告の自宅も被害にあった。
倉庫に放置されていた約2,750トンの硝酸アンモニウムへの引火が原因とみられている。
ベイルート港爆発事故の現場、右側の水が溜まっている部分で爆発が起こった、出典:Mehr News Agency
研究グループは、電離圏擾乱(でんりそうじょうらん)に着目した。
地震や爆発に伴う空気の振動で、電離層(高度約60~500km)にある電子の密度が激しく変わる現象である。
全地球航法衛星システム(GNSS)のデータから、爆発当日のベイルート上空の電離層の乱れを調べた。
その結果、爆発から約10分後、高度約300kmで電離圏擾乱が起きていたことがわかった。
この地点には僅かに大気があり、空気の振動が届いたとみられる。
今回の爆発で発生した電離圏擾乱は、噴煙が上空9kmまで達した平成27年の口永良部島(くちのえらぶじま)の噴火と同規模。
核兵器を除けば、人類が引き起こした爆発の中で最大級だったことが分かった。
研究グループによると、この全地球航法衛星システム(GNSS)を用いた測定法は、世界中で起きた様々な爆発現象を調べることが可能だという。
ベイルート港爆発事故は悲劇である。多くの死傷者がでた。
しかし、皮肉にも新しい技術が生まれた。
人類の歴史を見ると、事故や病気の流行、戦争などが起こる度に、人類は科学技術を進歩させてきた。
科学技術の進歩に犠牲は必要なのかもしれない。そう考えると...無慈悲である。