素人が新聞記事書いてみた

新聞記事のつもりでブログを書いています。

名大など、イネの収量の3割増加に成功

名古屋大学の木下俊則教授らの研究グループは、イネの収量を30%以上増加させることに成功した。

1つの遺伝子の発現を高めることにより、「気孔開口」と「根からの養分吸収促進」を同時に高める技術だという。

発現(遺伝子発現):遺伝子の情報を元に目的のタンパク質を作るまでの過程

 

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登熟期のイネ、出典:花々のよもやま話

 

イネは、イネ科イネ属の植物。

収穫物は「米」と呼ばれている。

トウモロコシ、コムギと並び世界三大穀物のひとつで、人類の食料の25%ほどを占めている。

 

イネなど多くの植物の表面には、気孔という小さな穴がある。太陽光によって開口し、光合成に必要な二酸化炭素の取り込みや、余分な水分の排出などを行う。

根からは、アンモニウムやリン酸、カリウムなど生命維持・成長に必須の養分を吸収する。

 

つまり、「気孔開口」と「根からの養分吸収促進」を同時に高めることができれば、植物の成長や収量を大きく増加させることができる。

しかし、今までそのような技術はなかった。

 

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イネの気孔と根からの養分吸収のイメージ、名古屋大学提供

 

研究グループはこれまで、気孔開口と根からの養分吸収促進に、細胞膜プロトンポンプが重要な役割を果たすことを明らかにしてきた。

細胞膜プロトンポンプとは、細胞内から外に水素イオンを輸送する一次輸送体。

 

研究グループは今回、1つの細胞膜プロトンポンプ遺伝子「OSA1」の発現を高めたイネを作出した。

このイネは野生のイネと比べ、根の窒素養分吸収が20%以上、光合成活性が25%以上高かった。

研究グループはこの技術を用いた植物を「ポンプ植物」と名付けた。

 

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通常のイネ(一番左)とポンプ植物イネ(一番左以外)、名古屋大学提供

 

研究グループは、野外の隔離水田圃場4カ所で2年間、ポンプ植物イネの収量評価試験を実施した。

結果、通常のイネと比べ収量が30%以上多かった。

 

研究グループは今後、他の植物での適用も進めていく予定。

社会での実用化も期待するとしている。

 

情報元:Plasma membrane H + -ATPase overexpression increases rice yield via simultaneous enhancement of nutrient uptake and photosynthesis | Nature Communications

 

1つの遺伝子発現の強弱により、収量が大きく変化するというのは興味深い。

遺伝子の研究が進めば、様々なことが可能になるだろう。食料の生産量を大幅に増やしたり、治療不可の病気が治るようになったり。

人類は遺伝子について、いや、自然科学について、まだ多くを知らない。