令和3年2月17日より国内で、新型コロナワクチンの接種が始まった。
接種は2回する必要がある。1回目の接種から3週間後に2回目を受ける。
このワクチンは、米国・ファイザーとドイツ・ビオンテックが共同開発したもので、日本における販売名は「コミナティ筋注」と言う。
mRNAワクチン(メッセンジャーRNAワクチン)という今までになかったタイプ。
mRNAワクチンは今回初めて実用化されたため、不安を感じている人も多いだろう。
だから、わかりやすく解説してみた。
前提知識が必要なため、①新型コロナウイルスの感染、②抗体、③mRNAワクチン、の順で解説する。
なお、わかりやすさに重点を置いているため、正確さは欠いているかもしれない。
新型コロナウイルスの感染のイメージ
①新型コロナウイルスの感染
新型コロナウイルスには、表面に「スパイクタンパク質」という突起があり、内部に「RNA」というものがある。
スパイクタンパク質は、ウイルスが細胞に入るとき必要なもの。細胞の受容体に付着し、細胞内に侵入する。ちなみに、細胞はウイルスより遥かに大きい。
RNAはウイルスの設計図である。これが細胞に取り込まれると、細胞が新型コロナウイルスを作り始める。
細胞で作られた新たな新型コロナウイルスは、細胞外もしくは体外にでていく。
これを繰り返すことにより、感染が拡大していく。
抗体のイメージ
②抗体
新型コロナウイルスのスパイクタンパク質がヒトの「抗体」に付着すると、ウイルスはヒトの細胞内に侵入できなくなる。
この抗体をヒトは今まで持っていなかった。抗体は通常、感染後数日で体内で作られる。
新型コロナウイルスのスパイクタンパク質
③mRNAワクチン
新型コロナウイルスのスパイクタンパク質に対する「抗体」を作るのに、ウイルス全体は不要である。スパイクタンパク質だけでいい。
この原理を利用したのが、mRNAワクチンである。
mRNAワクチンの作用機序(メカニズム)は、まず「メッセンジャーRNA」という天然化学物質の人工複製物を体内に入れる。
しばらくすると、このメッセンジャーRNAを設計図に、体内でスパイクタンパク質が作られる。
更に時間が経過すると、スパイクタンパク質に対する抗体が作られる。この状態になれば、新型コロナウイルスに感染しにくくなる。
体内における mRNAワクチンのメカニズムの概要
mRNAワクチンの最大のメリットは、予防効果が高いことである。
ファイザーによると、2回接種した場合の有効性は約95%。他の機関のデータでも、同様の数値がでている。
インフルエンザワクチンの有効性が40~60%ほど。この数値は極めて高い。
ただ、感染しなくなる訳ではない。そのようなワクチンはつくれない。
ワクチン接種による感染症が起こらないのも、大きなメリットである。
従来のワクチンは、ウイルスを弱毒化させたものなどである。だから、感染症を引き起こすリスクがあった。
しかし、mRNAワクチンは「新型コロナウイルスのRNA」を体内に入れないから、ワクチン接種により新型コロナウイルス感染症になることがない。
変異ウイルスにも有効である。
新型コロナウイルスのスパイクタンパク質は、1,273個のアミノ酸基がつながったものである。
英国や南アフリカで流行している変異ウイルスは、この数個が変化したもの。両国におけるデータを見る限り、予防効果に影響はほぼない。
大幅な変異をした場合には、予防効果が落ちることも考えられる。しかし、その場合にも、他のワクチンより短期間で新たなワクチンを作ることができる。
最大のデメリットは、非常に低温での保管が必要という点である。
ファイザーのワクチンは、マイナス60~80℃での冷凍保存が必要である。
mRNAワクチンは未知の技術である。だから、不安を抱く人も多いだろう。
特に、人工複製物「メッセンジャーRNA」を体内に入れることには。
新型コロナワクチン(mRNAワクチン)の主なメリットとデメリットをまとめると、以下のとおり。
新型コロナワクチン(mRNAワクチン)
メリット
・予防効果が高い
・感染症を引き起こすことがない
・変異ウイルスにも有効デメリット
・非常に低温での保管が必要
・未知の技術に対する不安
現時点では、mRNAワクチンのリスクはインフルエンザワクチンと同等である。
米国疾病予防管理センターによると、100万接種に11例ほどの割合で「アナフィラキシー」と呼ばれる重いアレルギー反応が出るという。うち、8割ほどはアナフィラキシー経験者。
長めの針を肩に近い部分に垂直に深く刺す「筋肉注射」のため、インフルエンザワクチンより痛い。半数以上に接種部位の痛みや 疲労がでると言われているが、大部分は数日以内に消える。
ただし、今後、何等かの大きな問題が起きないという保障はない。
新型コロナワクチン(mRNAワクチン)を接種すべきか?
決めかねている人は、かかりつけ医に相談するといいだろう。
これは筆者の主観だが、「不安に思っている人は、接種すべきではない」と思う。
ちなみに、筆者は接種する。