物質・材料研究機構(NIMS)は、小さな磁場変化だけで大きな磁気冷凍効果が得られる現象を発見した。
ホルミウムのメタ磁性転移現象を用いることにより、従来法より1桁程度の大きな磁気熱量効果を得ることに成功した。
低コストで小規模な液体水素の貯蔵・輸送システムへの応用が期待される。
ホルミウム:原子番号67の元素。常温では銀白色の金属。希少で高価なため工業用にはあまり利用されていない。
メタ磁性転移現象:磁場を加えていった際に、ある特定の磁場で磁化が大きく増加する現象のこと。
研究グループは、ホルミウムのメタ磁性転移現象に着目した。ホルミウムは、永久磁石程度の弱い磁場でもメタ磁性転移を起こす。
詳細に調べた結果、小さな磁場変化だけで大きな磁気冷凍効果が得られる現象を発見した。従来の磁気冷凍材料と比べ、磁場変化量当たりで1桁程度の大きな磁気熱量効果を得ることに成功したという。
加えて同現象は、水素の沸点(マイナス253度)付近から高温側の広い温度範囲で起きていることも分かった。
従来では一般的に、特定温度ごとに磁気冷凍材料を選んで利用していた。
同現象を利用すれば、1つの磁気冷凍材料で、幅広い温度での冷却作用を得ることが可能。
液化水素の保管は小規模になるほど効率が低くなるが、今回の成果を応用できれば、この欠点は改善される。
低コストで小規模な液体水素の貯蔵・輸送システムへの応用が期待される。水素ステーションや液体水素運搬用のトレーラーなどが考えられる。
情報元:High-efficiency magnetic refrigeration using holmium | Nature Communications
水素を貯蔵・輸送する場合には、液化水素(液体)とする方法が主流である。体積を800分の1程度にまで小さくできるからだ。ただ、マイナス253℃という超低温を保つ必要がある。
今回の技術が実用化できれば、水素を超低温まで冷やすエネルギーを大幅に節約することができる。
水素の消費量が増えていくのは、ほぼ確実。
ぜひ、実用化してもらいたい技術だ。もちろん、簡単にはいかないだろうが。
超低温での保管が低コスト・小規模設備でも可能となれば、恐らく、水素以外の新たな用途も生まれるだろう。