大阪市立大学の名波哲准教授らの研究グループは、日本の「ヤマコウバシ」が1本の雌株から生じた巨大なクローンであることを発見した。
生物におけるクローンとは、元の生物固体と同じ遺伝情報を持つ生物のこと。
ヤマコウバシ(山香ばし)は、クスノキ科クロモジ属の落葉樹。
支那大陸、朝鮮半島、日本(宮城以西の本州、四国、九州)に分布する。
ヤマコウバシ、出典:Wikipedia
植物には、雄株と雌株に分かれた「雌雄異株の種」と、1株の中におしべとめしべを兼ね備える「両性株の種」が存在する。
大陸のヤマコウバシには雄株と雌株がある。
しかし、日本のヤマコウバシでは雌株しか見つかっていない。
研究グループは、ヤマコウバシの親木や種子を東北(宮城)から九州(熊本)にかけて集めた。直線距離にして1000キロ超。
そして、これらを遺伝子の塩基配列を高速に読み出せる装置、次世代シーケンサーによりDNA情報を解析した。
結果、種子の遺伝子型は母樹の正確なコピーとなっていたことを発見した。更に、サンプル間での変異がほとんど見られなかった。
これは、日本中のヤマコウバシが全て同じ遺伝子をもったクローンであることを意味する。
ヤマコウバシの近縁種に、アブラチャン、クロモジ、ダンコウバイがある。この3種は日本のものでも、雌雄両方の株が生育している。
この3種も同様の調査をした結果、必ず雌雄の交配を行っていることがわかった。
研究グループは、更に研究を進めることにより、生物に『性』が存在する理由の解明につながる可能性があると考えている。
植物には多くのクローンが存在する。
しかし、今回の「日本のヤマコウバシ」ほど大規模なクローンは世界にも極めて珍しいという。
植物はというのは不思議だ。いや、生物といった方がいいか...