米国のフェルミ国立加速器研究所は7日、素粒子物理学の基礎「標準理論」では説明できない現象を捉えたと発表した。
実験の結果、素粒子ミューオンの磁気的な性質が「標準理論」で想定される値から大きく乖離していたという。
実証されればノーベル賞は確実。いや、現在の物理学が変わる。
素粒子物理学:物質の最も基本的な構成要素である素粒子を研究する学問。物理学の一分野。
標準理論:素粒子物理学における3つの基本的な相互作用「強い相互作用」「弱い相互作用」「電磁相互作用」のこと。専門的には「標準模型」と言う。
実験を行った装置、フェルミ国立加速器研究所提供
フェルミ国立加速器研究所は、2018年より実験を行っていた。
素粒子ミューオンを光速近くまで加速させ、直径約15メートルの巨大な磁石(上の写真)に放り込み、磁気的な強さを測定していた。
その結果、測定値が「標準理論」の予測値から大きくズレていた。
今回の結果は、2001年に米国のブルックヘブン国立研究所が行った実験結果と、ほぼ一致している。
各研究機関などによると、実験結果が正しい確率は 99.997%(4.2σ)だという。物理学において「確実に正しい」とされる 99.9999%(5σ)までは達していない。
フェルミ国立加速器研究所は更に研究を進め、新たな物理法則の発見および理論の確立を目指すとしている。
情報元:First results from Fermilab’s Muon g-2 experiment strengthen evidence of new physics | News
今回の結果が正しい場合、未知の力や粒子が存在していることになる。
今までの物理法則では不可能と思われていたものが、実は可能だったとわかることも考えられる。
ただ、実験結果が「確実に正しい」と証明されるには、少なくとも数年はかかるだろう。
どちらにしろ、まだ、人類が知らないことは多い。
これは多くの希望と危険が眠っていることを意味する。