大阪大学の松浦善治特任教授らの研究グループは、新型コロナウイルスを2週間で人工合成することに成功した。
同ウイルスを人工合成する方法は今までもあったが、数か月の時間が必要だった。
また、新型コロナウイルスの変異株(変異種)にも、迅速に対応できるという。
新型コロナウイルスの感染のイメージ
新型コロナウイルスには、外側に「スパイクタンパク質」という突起がある。これはヒトなどの細胞内に侵入する際に必要なもの。
一方、内部には「RNA(リボ核酸)」があり、ここに遺伝情報(遺伝子)がある。
RNAがヒトなどの細胞に取り込まれると、その細胞は新型コロナウイルスを作り始める。そして、新たに作られた新型コロナウイルスは、細胞外もしくは体外にでていく。
これを繰り返すことにより、新型コロナウイルスはその数を増やしていく。
新型コロナウイルスを人工合成する手順
研究グループは、新型コロナウイルス感染症の検査にも使われている、遺伝子増幅技術「PCR法」に着目した。
まず、9つに分割した新型コロナウイルスの遺伝子と、つなぎ目となる「リンカー断片」という遺伝子を用意(上図の左)。これらをPCR法で増やした。
次に、各断片が隣り合う断片と重なる領域を持つようにつなぎ、再びPCR法を行うと、10個の断片が1つに繋がり「環状DNA(デオキシリボ核酸)」となった(上図の中)。
最後に、「環状DNA」をヒトの細胞にいれると、DNAからRNAがつくられ、新型コロナウイルスを人工合成することができた(上図の右)。
この方法は、遺伝子の特定の部分だけを自由に編集することもできる。
新型コロナウイルスの変異株(変異種)にも対応でき、かつ、新たな変異株を合成することも可能。
研究グループは既に、この技術で作った新型コロナウイルスを使い、動物実験などを行っている。
今回の成果により、新型コロナウイルスに関する研究が進むだろう。多くの研究室(ラボ)で解析できるようになるからだ。
ただ、悪用する輩がでないか心配ではある。
厳重な管理が必要だと筆者は思う。