インターネットの普及により、現在では個人でも比較的に簡単に情報を発信できるようになった。
情報発信の方法は、FacebookやInstagram、TwitterなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やブログ、ホームページなど様々である。
最も効果的な方法のひとつは、動画共有サービス「YouTube」への動画投稿だ。
自らのチャンネルを作り、動画を投稿していく。人気のチャンネルになると、チャンネル登録者は数万人、動画を投稿すると再生回数は数10万回を超える。
このようなチャンネルは、ファン(支持者)を抱えている場合が多い。
ネット上では様々な情報発信が行われているが、政治に関する情報を発信している人達もいる。
そのような人達のなかには、自らが政治団体を作り、選挙にうってでる人もいる。しかし、当選できない場合が多い。
平成26年(2014年)2月9日、東京都知事選挙が行われた。
この選挙には、元航空幕僚長の田母神俊雄(たもがみ としお)氏が立候補していた。
田母神氏のネットでの人気は凄まじく、支持者の多くが「当選間違いなし!」と言っていた。
しかし、結果は舛添要一氏が2,112,979票(得票率43.40%)を獲得し当選。田母神氏は610,865票(得票率12.55%)で4位だった。
桜井誠(本名は高田誠)氏も、平成28年(2016年)と令和2年(2020年)の2回、東京都知事選挙に出馬した。
桜井氏には熱狂的な支持者がいる。
しかし、平成28年の都知事選は114,171票(得票率1.74%)、令和2年は178,874票(得票率2.92%)で、いずれも落選している。得票数は当選者のおよそ20分の1程度。
ネットで人気でも、選挙で勝つのは難しい。
国会議員に当選したのは、NHKから国民を守る党(現:嵐の党)の立花孝志(たちばな たかし)氏くらいである。
立花孝志氏、出典:Wikipedia
ネットで人気でも、なぜ、選挙で勝つのは難しいのか?
見解は人それぞれに異なるだろうが、筆者は以下の3点が大きいと思う。
- 知名度が低い
- 実績がない
- 支持者のカルト化
選挙で勝つために最も重要なことは知名度である。
例えば、同じ選挙区で「知名度10%の人」と「知名度50%の人」が立候補したとする。「知名度10%の人」を知っている有権者全てがこの人に投票したとする。「知名度50%の人」が同数の票を得るには有権者の20%でいい。
実際には他の要素も入ってくるが、知名度は最大の武器である。
ネットで人気の人は、確かに、物事の本質をついている。しかし、彼等の多くは政治家としての実績がない。
いくら正論を言っても、実績がない人間は評価されない。その証拠に、企業が彼らを支持することはない。
ネットで人気の人は、やはり、他の人とは違うことを言っている場合が多い。だからこそ、支持を受けているのだが、それは一部の信者からの熱狂的な支持である場合が多い。
つまり、支持者はカルト化しやすい。
某極右政治団体の候補者が立候補したとき、支持者は「○○が当選しないと日本は滅ぶ」とか「○○を総理大臣にするしかない」などと言っていた。
これを見れば、普通の人は「ヤバい連中だ」と直感し投票しない。
ネットで人気でも、多くの場合、身内での人気でしかないのだ。
この事実を認識していないと、選挙で負けが続けば、変な方向に行く可能性がある。
宗教団体「オウム真理教」も、平成2年(1990年)の衆院選で立候補者全員が落選してから、武装化へ急激に舵を切った。
これが筆者の考え過ぎならいいのだが...