気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は2021年8月9日、世界の平均気温が19世紀後半と比べ、2011~2020年の10年間平均で約1.09度上昇したと発表した。
人間の活動が地球温暖化に影響を与えていることは「疑う余地がない」と断定した。
また、2021~2040年の間に1.5度まで上昇すると予想した。
地球温暖化に関しては「よくわからない」という人も多い。また、事実とは違う情報が発信されている場合も多い。
だから、この記事でわかりやすく説明したいと思う。
「1951~1960年の平均気温」と「2011~2020年の平均気温」の比較、原典:Nasa
地球温暖化とは、地球の気候系の平均気温が長期的に上昇することである。
20世紀半ば以降の温暖化は、人為起源の温室効果ガスが主な原因と考えられている。
人為起源の温室効果ガスの種類別排出割合は、2016年時点の概算で、二酸化炭素(CO2)が76%、メタン(CH4)が16%、一酸化炭素(CO)が6%、その他2%。
地球は気候が寒冷な氷期(氷河期)と、温暖な間氷期を約10万年周期で繰り返している。
現在、地球は間氷期である。学者により見解は異なるが、少なくとも、あと3万年は氷期(氷河期)はこない。
地球温暖化は「長期的に」平均気温が上昇することだが、その期間は今後数十年から、長くても数百年の話である。
1970年代頃までは、地球は寒冷化しているという考えが主流だった。しかし、調査を進めていくうちに、温暖化しているという証拠が増えてきた。
1988年、気候変動に関する政府間パネル(略称:IPCC)が設置され、本格的に調査・研究が始まった。IPCCには数千人もの学者が関わっているため、公表される情報は平均的なものとなる。
1990年、IPCCは第1次評価報告書を公表。二酸化炭素などの温室効果ガスの大気中の濃度は、産業革命時より確実に増加と報告。地球温暖化の可能性を示唆したが、多くの不確実性もあるとしていた。
IPCCは評価報告書の度に、温暖化の可能性を強めていった。
2021年の第6次評価報告書では、人間の活動が地球温暖化に影響を与えていることは「疑う余地がない」と断定した。
世界の年平均気温偏差、出典:気象庁
2021年8月9日、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書第1作業部会報告書(自然科学的根拠)が公表された。主な内容は以下のとおり。
- 世界平均気温は19世紀後半と比べ、2011~2020年の10年間平均で約1.09度上昇した
- 2019年時点で大気中の温室効果ガス濃度は、CO2が410 ppm(産業革命前より約47%高い)、CH4が1,866 ppb(産業革命前より約156%高い)
- 人間の活動が地球温暖化に影響を与えていることは「疑う余地がない」
- 世界平均気温が19世紀後半と比べ1.5度上昇するのは、2021~2040年の間と予想
- 2081~2100年の時点で、世界平均気温は19世紀後半と比べ1.0~5.7度上昇すると予想
世界平均気温の基準点は「19世紀後半」と言われる場合と、「産業革命前」と言われる場合がある。どちらも同じ意味だが、当記事ではIPCCと同じ「19世紀後半」としている。
1850~2019年の二酸化炭素排出量は累計で約2390ギガトン。気温上昇を1.5度以内に抑えられる20年以降の排出余地は約400ギガトンと算定。排出量増加は年30~40ギガトンのペース。
巨大隕石落下や大規模火山の噴火などの特殊事情がない限り、2030年前後に1.5度に達するのはほぼ確実。
21世紀後半以降は、そのまま上昇を続ける可能性も、低下に転じる可能性もあるという。
現在の状況を見る限り、2100年の世界平均気温は2度強上昇(現在より1度強上昇)の可能性が高いとされる。
19世紀後半の時点で「50年に一度の暑い日」は、現在(1度強上昇)で4.8倍ほどに増えた。1.5度上昇で8.6倍、2度上昇で13.9倍になると予想される。
19世紀後半の時点より、現在の海面は約20センチ上昇している。2300年の時点で、現在と少しだけ上昇という予想から、15メートル上昇するという予想まである。
地域にもよるが豪雨も増加傾向で、今後、増えるとみられる。
「2001~2010年の平均気温」と「2011~2020年の平均気温」の比較、原典:Nasa
私たちが普段生活をしていて、地球温暖化を意識することはない。
この20年ほどで地球温暖化は進んだと言われているが、「2011~2020年の平均気温」はその10年前と比べ、0.16度ほどしか上昇していない。
ただ、今後20年ほどは、少しつづだが確実に世界平均気温は上昇していく。
地球温暖化対策を簡単に言えば、二酸化炭素とメタンの排出量を削減することである。そして、実行するのは電力会社や工場などがメインである。
最も有効な対策は石炭火力発電所の廃止だ。日本には二酸化炭素排出量が少ない火力発電所も多いが、それでもLNG火力発電所(コンバインドサイクル)の倍ほどを排出している。
個人ができる地球温暖化対策は皆無である。レジ袋有料化など効果はほぼない。意識改革くらいだろう。
地球温暖化に対する考えは、人により千差万別である。もっと積極的に進めるべきだという人もいれば、何もする必要はないという人もいる。
筆者は、無理をしない範囲で取り組むべきだと思う。