東京都武蔵野市議会に、外国籍者でも日本国籍者と同じ条件で、住民投票の資格者とする条例案が提出された。
18歳以上で、同市の住民基本台帳に3カ月以上登録されていれば、国籍を問わず投票資格があるという内容。正式名称は「武蔵野市住民投票条例案」という。
同条例案は12月21日に同市議会本議会で採決される予定で、可決すれば成立となる。
武蔵野市住民投票条例案は、政治に関心のある層を中心に話題となっている。
筆者は知り合いから、武蔵野市の条例はどのようなものかという質問を受けた。同様のことを思っている人もいそうなので、簡単に説明したい。
住民投票とは、一定地域において、住民のうち一定の資格を持つ人を対象に、特定の事象に対しての意思を問うもの。
日本における住民投票には「法的拘束力のある住民投票」と「法的拘束力のない住民投票」がある。
法的拘束力のある住民投票には、①日本国憲法、②地方自治法、③合併特例法、④大都市地域特別区設置法...によるものがある。例えば、大阪維新の会が平成27年と令和2年に行った「大阪都構想」の是非を問う住民投票は④のタイプである。
他の住民投票は「法的拘束力のない住民投票」である。このルールを事前に作っておこうというのが「常設型住民投票条例」である。武蔵野市が成立・施行しようとしている条例はこれである。
なお、法的拘束力のない住民投票なら、常設型住民投票条例が無くても、事案ごとに制定する「個別型住民投票条例」により住民投票はできる。
外国籍者でも投票資格者とする常設型住民投票条例は、どの自治体にあるのだ?
令和3年11月末時点で、外国籍者でも投票資格者としている「常設型住民投票条例」は47自治体にあるとみられる。ほとんどの自治体では、外国籍者と日本国籍者で投票資格の条件が違うが、逗子市(神奈川県)と豊中市(大阪府)の2市では実質的に同じとなっている。
外国籍者も投票資格者とする「常設型住民投票条例」があるのは、以下の47自治体とみられる。ただし、漏れがあるかもしれないし、見解の違いもあるかもしれない。
- 増毛町(北海道)
- 稚内市(北海道)
- 北広島市(北海道)
- 苫小牧市(北海道)
- 遠軽町(北海道)
- 美幌町(北海道)
- 北見市(北海道)
- 占冠村(北海道)
- 宮古市(岩手県)
- 奥州市(岩手県)
- 滝沢市(岩手県)
- 西和賀町(岩手県)
- 柴田町(宮城県)
- 美里町(埼玉県)
- 鳩山町(埼玉県)
- 三鷹市(東京都)
- 小金井市(東京都)
- 杉並区(東京都)
- 我孫子市(千葉県)
- 流山市(千葉県)
- 川崎市(神奈川県)
- 逗子市(神奈川県)
- 大和市(神奈川県)
- 小諸市(長野県)
- 信濃町(長野県)
- 上越市(新潟県)
- 静岡市(静岡県)
- 掛川市(静岡県)
- 高浜市(愛知県)
- 名張市(三重県)
- 宝達志水町(石川県)
- 越前市(福井県)
- 米原市(滋賀県)
- 愛荘町(滋賀県)
- 野洲市(滋賀県)
- 岸和田市(大阪府)
- 豊中市(大阪府)
- 大東市(大阪府)
- 阪南市(大阪府)
- 宍粟市(兵庫県)
- 生駒市(奈良県)
- 北栄町(鳥取県)
- 日吉津村(鳥取県)
- 広島市(広島県)
- 大竹市(広島県)
- 山陽小野田市(山口県)
- 杵築市(大分県)
「法的拘束力のない住民投票」なら外国籍者を投票資格者としても、法律上問題はない。
ただ、人それぞれに見解が別れる。これは宗教論争と同じで、賛成派と反対派がいくら話し合いをしても答えは出ないだろう。
ちなみに、筆者は反対である。